話数単位で選ぶ、2020年TVアニメ10選

 今年も参加。

 

1『安達としまむら』9話「そして聖母を抱擁する愛 マリーゴールド

2『サザエさん』8087話「中島くんのマイ砥石」

3『富豪刑事』4話「空っぽのポケットほど、人生を冒険的にするものはない」

4『ヒーリングっど♥プリキュア』27話「気球よ飛んで!アスミとラテの熱い想い」

5『ミュークルドリーミー』16話「私はやっぱりチアっちゃお! 」
6『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』11話「破滅の時が訪れてしまった… 後編」

7『GREAT PRETENDER』13話「CASE3_4: Snow of London」

8『ゲゲゲの鬼太郎』91話「アンコールワットの霧の夜」

9『キラッとプリ☆チャン』118話「キラッとあつまれ!プリティーオールフレンズだッチュ!」

10『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』13話「みんなの夢を叶える場所」

 

 

 

 

 

1『安達としまむら』9話 「そして聖母を抱擁する愛 マリーゴールド

脚本:大知慶一郎 コンテ:桑原智 演出:山本隆太  作画監督ウクレレ善似郎 大塚八愛 興村忠美 Lee Min-bae 劉泉 ビート

 

統一感のあるシリーズのため話数選定にいちばん困った。画作り、話運び、原作からの取捨選択の妙に唸る作品だった。1クール13話の均質化ができて、凸凹が無くなることは望ましいのだろうけども、突出した話数が減ることは少し寂しくもある。まあ、他の人の10選を見るといっぱい魅力的な回があるので、手広く観ろということに尽きるのかもしれない。

 

 

 

2『サザエさん』8087話「中島くんのマイ砥石」

脚本:雪室俊一 コンテ:森田浩光 演出:森田浩光 作画監督:関本典孝

時代を駆け抜けてきた平成サザエさん。その力が今令和へと受け継がれる!

受け継がれたはずだが雪室先生は相変わらず不思議回を量産。今年は従来のホリカワ推しよりも中島の使い方が記憶に残った。他の脚本家回では砥石を持ち出す中島は見られぬ。

 

 

 作監として、動きでは関本渡回、画の美しさでは鈴木佐智子回がやはり印象に残った。

 

 

 

 

 

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10選関係ないが勝手に貼る。

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3『富豪刑事』4話「空っぽのポケットほど、人生を冒険的にするものはない」

脚本:岸本卓 コンテ:池田愛彩 演出:池田愛作画監督:山村俊了 二宮奈那子

毎年恒例納豆アニメ枠(そんなものはない)から、シリーズの箸休め的な話数をセレクト。

鈴江を始めとしてコミカルな楽しさが心に残る。

 

 

 

 

 

普段心情を吐露しない大助の内面が少しずつ伺えるのが、相棒加藤春の感覚を共有しているともいえる。大事件の起こらないこの話数があることで、二人の関係性が深まり、シリーズ全体にも厚みが出たと思う。

結局大助が出奔した理由が言葉では明示されないところ(納豆が食べられないことにへそを曲げた? だから納豆を食べるレシピを得意気に披露する?)や、依頼の結末の釈然としない感じが若干奇妙な余韻を残しつつもシリーズ中終盤へ繋いでいく。

シリーズ全体を観通したあとに振り返ると、各人特に神戸家の面々の行動に一種皮肉な味わいを感じるようになった。

 

4『ヒーリングっど♥プリキュア』27話「気球よ飛んで!アスミとラテの熱い想い」

脚本:伊藤睦美 コンテ:三上雅人 演出:三上雅人

作画監督:松浦仁美

 

東映アニメーションの作品を観る楽しみの一つはスタッフの進化、変化だ。長らくプリキュアを手がける三上雅人回を選出。キャリア最初の頃はきちっとまとまっているな、ぐらいの印象だったが、ここ1、2年の三上回は面白さのアップが顕著で、この回もまとまりよい中に遊び心や楽しさが見えていて愉快だった。

若手の高戸谷一歩回も目を惹くものがあったが今回はみかみん回へ。

 

5『ミュークルドリーミー』16話「私はやっぱりチアっちゃお! 」

脚本:大場小ゆり コンテ:桜井弘明 演出:村山靖 作画監督:小倉恭平 松本文男 Park Ji-Seung 阿形大輔 岡辰也

いきなり出てきた作品が話題を集めた。好評かつ作り手が楽しんで作っていることがうかがえて観ていてとても楽しい。どの話数も語りたくなるような遊び、楽しさに満ちていて突出した1話を探すのも難しいが、特にはっちゃけた楽しさにあふれた16話を選んだ。

 

 

 

6『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』11話「破滅の時が訪れてしまった… 後編」

脚本:清水恵 コンテ:井上圭介 演出:井上圭介

作画監督:井本由紀 竹森由加 澤入祐樹 大槻南雄

原作を読んで楽しみにしていたシリーズ。コミカライズが特に秀逸で期待が高かったが世評もよく人気も出た。

話数的にはどれも平均して面白く、選ぶに迷ったが井上監督の演出回11話に。

本編とは特に関係ないが、番宣動画で主演の内田真礼が雨の中お洒落な服で畑に行っていたのが印象に残った。

 

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7『GREAT PRETENDER』14話「CASE3_4: Snow of London」

脚本:古沢良太 コンテ:金森陽子 演出:金森陽子 作画監督:石橋翔祐 髙部光章 西原恵利香 総作画監督浅野恭司

コンゲーム」ものを初めて観たため目新しくて楽しかった。その中でもシンシアの抒情的なエピソードを選出。

画作りも他にない感じが一貫していて、パッと見てもこの作品ということがわかる個性を持っていた。

 

 

ただコンゲームものというのは二転三転する驚きが面白さの妙だと思うが、ミステリならトリックが肝になるところが、「実は違いました、本当はこうでした」の連続ではどうしても単調になりがちで、そうすると人物の背負った背景や、物語全体の大きな流れを描くことになり、どんでん返しは薄まっていくわけで、ジャンルとして何度もやったり長く続けることは難しいのではと思った。どんでん返しが起こるとわかって観るのでは、やはり斜にかまえてしまう。

ミステリではその歴史が示すとおり、トリックの驚きのみに頼らない作品作りができているけども、コンゲームものというジャンルがあるとすればという話。

ともあれ本作しか知らない身としては最後まで楽しく観られたので、それは個人的にとてもよかったと思いました。

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世界が本当に松本理恵を知る日まで。

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8『ゲゲゲの鬼太郎』91話「アンコールワットの霧の夜」

脚本:長谷川圭一 コンテ:角銅博之 演出:角銅博之 作画監督:太田晃博

ゲゲゲの鬼太郎6期から角銅演出回。鬼太郎シリーズは過去のリメイクも多く、現代的な要素を盛り込んだ回が注目されることが多かったと思う(井上亜樹子脚本回など)。

こちらも2期「アンコールワットの亡霊」を底本に荘重な話運びで、霧の向こうに全てが過ぎ去っていくような余韻がまた素晴らしかった。戦争も妖怪も、私たちの手の届かないところに遠ざかっていくような気分になった。

 

本シリーズは、現代的な感性のアップデートと戦争(第二次世界大戦)との距離感の変化が特に心に残るものだった。

 

ふと振り返ると3年連続で鬼太郎を挙げている。時にシリアスに時にふざける、東映の魅力の詰まったシリーズだったと思う。

 

 

 目を閉じるとろくでもない回ばかりが浮かぶのは何故だろうか……(東映アニメーション株主の発言)。

 

9『キラッとプリ☆チャン』118話「キラッとあつまれ!プリティーオールフレンズだッチュ!」

脚本:金杉弘子 コンテ:小林浩輔 演出:小林浩輔 作画監修:斉藤里枝 川島尚 青木康哲 宮崎輝 島田さとし

 

 プリティーシリーズからお祭り的な一本。

 

リメイク、リブート、リバイバル。色々な手段で過去作の遺産を現在に蘇らせる企画が溢れているが、リアルタイムで感じられるようにアンテナを張っていきたい。

ところで長らくプリティーシリーズに関わっている本話数演出小林浩輔氏のドーンと来る一本が観たいなあと最近よく思う。

 

10『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』13話「みんなの夢を叶える場所」※ルビとして「スクールアイドルフェスティバル」

脚本:田中仁 コンテ:河村智之 ほりうちゆうや 演出:河村智之 ほりうちゆうや 作画監督:市原圭子 井元一彰 伊礼えり 尾尻進矢 加藤明日美 北島勇樹 木村文香 工藤ゆき 合田真さ美 清水文乃 とみながまり 冨吉幸希

 

あまり第1話と最終話は選ばないようにしているが(話数単位で選ぶという企画の趣旨のため)、今回ばかりはサンライズの熱い心意気に打たれて選出。

とても丁寧で優等生的なシリーズだったが終盤かなりの急加速。ゲームとの兼ね合い、昇華のさせ方も見事(であったと聞く)。

そして最終話、お台場、ビッグサイトが舞台の作品で、展示されているユニコーンガンダムを出す。ここまではまだ普通のことだが、物語の最終、前触れもなく現出、演出として秀逸。

上品な良質さでなく、破天荒なエネルギー。サンライズ作品に求めるものがそこにあった。

 

その他に、侑のピアノがEDのイントロになっていることを明示したラストもまた良かった。

 

 今年も大きな事件は個人的にはなく、といった感じで終わりそうだ。

世間的には新型コロナはじめ諸々大事件が多かったけども、ワイドショー的な感覚と自分の感覚の乖離は確認するのも面倒くらいなので、まあなるようになると思う。新しいシリーズに入っていくのがやっぱり少し億劫なので、そこは変わらず課題だ。