話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選

今年は例年になくグソクムシ旋風の吹き荒れる日本国TVアニメ界だった。

f:id:an-shida:20211230205549j:plain

f:id:an-shida:20211230205601j:plain

といったところで2021年の「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」。

1『名探偵コナン』1028話 「ケーキを愛する女のバラード」

2『サザエさん』8235話「おわれて見たのは」

3『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X』8話「お見合いしてしまった…」

4『Sonny Boy』8話「笑い犬」

5『ワッチャプリマジ!』4話「コンビ解散!?マジ早すぎだよ~」

6『ルパン三世 PART6』10話「ダーウィンの鳥」

7『呪術廻戦』21話「呪術甲子園」

8『古見さんは、コミュ障です』4話コミュ10「身体検査です。」
コミュ11「恋です。」

9『ミュークルドリーミー』41話「バレンタイン和菓子配っちゃお!」

10『ワールドトリガー』8話「意思」

 

 

 

1『名探偵コナン』1028話 「ケーキを愛する女のバラード」

脚本:浦沢義雄 コンテ:高木啓明 演出:黒田晃一郎 藤野陽介  作画監督:長川薫 tofu 山本道隆

ゲストに日笠陽子を迎えた浦沢義雄脚本回。

日笠陽子と言えば、個人的印象深いものベストワンは『けいおん!!』のライブ中、ファンのコールで音が聞こえなくなり、歌えなくなってしまったところを豊崎愛生にサポートされたことだ。まさにライブ的なハプニングで、アニメのワンエピソードのようなドラマだった。

 

さて本編を観ていく。お菓子会社の社長がシンクいっぱいのあんこに埋もれて死亡する。タイトルどおり、その犯行は洋菓子を愛する女の妄執によるものだった。

 

 

大切なあなたにカラメルソース グラニュー糖にブラウンシュガー

f:id:an-shida:20211202095408j:plain

大切なあなたにカラメルソース メイプル ハチミツ 和三盆

f:id:an-shida:20211202095534j:plain

これは、なんだ。

 

どこかのインタビューでコンテを務められた高木さんのコメントを読んだような記憶がある。

浦沢義雄脚本は責任をもって私が担当します」と(たしか)語られていて、プロの矜持を感じたものだったが、それはそれとして本作は「ヘンテコなストーリーに負けないぐらい強い映像を重ねていく」という手法なのか、凄まじく濃い映像が展開されていた。

 

特に終盤のダンスシーンは、小五郎が寝ていることに気づかないまま流れに乗ってダンスをしてしまう犯人の焦りと甘いものに妄執する様子が映像化されている。

実況では「やけっぱち」と自分は言っているが、それは浦沢脚本に立ち向かうことを知らない私の限界を表している。

強い脚本には強い演出をぶつける。それが一流の回答なのだ。

 

 

さて、『名探偵コナン』には浦沢義雄脚本回が今年も幾度か登場しているが、浦沢投石を自粛したのか、アイドルがたわしを投げつけられる回(1010話「笑顔を消したアイドル」)があり、時代の変遷が感じられた。

 

2『サザエさん』8235話「おわれて見たのは」

脚本:浪江裕史 コンテ:森田浩光 演出:森田浩光 作画監督:関本渡

現代『サザエさん』にも変遷が色々とあって

今年は脚本家に新しい方が登場しサザエ界隈がざわめいた。

きちんと筋のあるストーリーを作っていて、個性を発揮している(筋のないような回が多いのですサザエさんは)。

 

今回選出の「おわれて見たのは」はワカメと波平の物語で、なんといっても画が美しく抒情的な温かみが印象に残った。

 

今年は例年のごとく鈴木佐智子作監、関本渡作監の鮮烈さだけでなくベテラン陣も見応えある回があり楽しめた。またストーリー作りも城山先生雪室先生以外の書き手の脚本に目立つものが多かった。

 

その雪室俊一先生は相変わらずの中島推しかと思いきや

f:id:an-shida:20211228130800j:plain

ホリカワくんが透明人間のサインを欲しがる回(8269回「透明人間のサイン」)や、カツオのゴミ箱を愛するあまり校長室にゴミを捨てに来る話(8305回「カツオのゴミ箱」)など、要所で余人には真似できないホリカワを投入し、視聴者の心を波立たせていた。

f:id:an-shida:20211228130820j:plain



 

 

3『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X』8話「お見合いしてしまった…」

脚本:笹野恵 コンテ:戸澤俊太郎 演出:戸澤俊太郎 作画監督:服部憲知 松田萌 上田彩朔 木村拓馬 小幡公春 井本由紀 高橋美香 徳田夢之介 山村俊了 二宮奈那子

f:id:an-shida:20211230225353j:plain

 

『はめふら』にここまで個性が際立つ回が来るとは思わなかった。

圧倒的なまでの画面と、それでもまだ足りないと言う作り手の声が聞こえてくるかのような熱の入り様。

 

若干「意味の塊」を感じさせるところがあったが、演出家の経歴を見るとなるほどと思わせられる。どのように歩んでいくかがとても気になっている。

 

 

4『Sonny Boy』8話「笑い犬」

脚本:夏目真悟 コンテ:斎藤圭一郎 演出:斎藤圭一郎 作画監督斎藤圭一郎

見事な画づくりのシリーズの中でも強い個性の出た回を選出。

f:id:an-shida:20211230225958j:plain

f:id:an-shida:20211230230032j:plain

f:id:an-shida:20211230230052j:plain

f:id:an-shida:20211230230121j:plain

語り口の味のある4話「偉大なるモンキー・ベースボール」と迷った。

 

5『ワッチャプリマジ!』4話「コンビ解散!?マジ早すぎだよ~」

脚本:坪田文 コンテ:佐藤順一 小林浩輔 演出:小林浩輔 作画監督:戸田さやか 斉藤里枝 川島尚 満田一 青木康哲 島田さとし

f:id:an-shida:20211230232424j:plain

f:id:an-shida:20211230232436j:plain

f:id:an-shida:20211230232457j:plain

ドラマとショーが融合していて、強い印象を残す。

 

6『ルパン三世 PART6』10話「ダーウィンの鳥」

脚本:押井守 コンテ:荒川眞嗣 演出:そえたかずひろ 作画監督:高木信一郎

押井守がルパンをやる! 直近の『ぶらどらぶ』を見ておののいた私は押井ルパンビンゴを作ってどうかこれが全部埋まることのないように祈っていた。

f:id:an-shida:20211230232911j:plain

結論から言うと全くの杞憂だった(当たり前)。

 

「ルパンは何を盗むのか?」「何を盗むことでルパン足りえるのか」

幻に終わった「押井守版ルパン」では虚構を盗ませようとした。今回は何を?

 

押井脚本の一本目「ダイナーの殺し屋たち」は冷戦の東西対立にヘミングウェイを絡ませて、20世紀には確かにあった盗むものが、今はもうないことを描いた。

 

そして、この10話では「人間を超越するもの」を「盗まない選択をした」世界が描かれる。その選択をするのはルパンでなく不二子なのだが、これについては識者が良い論を書くだろう。

客演として、また押井版ルパンを作ろうとした人間として、これ以上なく綺麗な物語だったと思う。

 

7『呪術廻戦』21話「呪術甲子園」

脚本:瀬古浩司 コンテ:梅本唯 演出:梅本唯 作画監督:吉崎雅博 井手上義英 丹羽弘美 北村晋哉 高田陽介 坂本ひろみ 崎口さおり

 

芥見下々の作品には強く冨樫義博の刻印があって、それはハンターハンターオマージュとかそういうレベルでなく、「作家の血肉」になっていると思う。『エヴァ』の影響も強いだろうが、冨樫義博の方が深いところにある気がする。

コンテ演出の梅本唯は過去に冨樫義博の『レベルE』にも参加していてその回を見ると冨樫義博と相性が良いように感じる。

私の好きな芥見下々(とその底流にある冨樫義博)を強く感じられるこの回がとても好きだ。

 

8『古見さんは、コミュ障です』4話コミュ10「身体検査です。」
コミュ11「恋です。」

脚本:長谷川圭一 コンテ:川畑えるきん 演出:川畑えるきん 作画監督:香月麻衣子小川茜

鮮烈な1話を観たとき驚いた。原作のコミカルさを強調した楽しい作品になると思っていたので不意打ちだった。

などと言っているうちに、この4話が来た。

振り幅大きい表現が記憶に残るが、逆に言うとどこまでやれば作品世界は壊れるのだろうか。

『はめふらX』と同じく、「踏み込んだ」一本だと思う。

 

9『ミュークルドリーミー』41話「バレンタイン和菓子配っちゃお!」

脚本:横谷昌宏 コンテ:高木啓明 演出:高木啓明 作画監督:小倉恭平 古澤貴文 岡辰也 福世孝明 松本文男 総作画監督:松本文男

 

2021年は『コナン」に続き『ミュークル』で

高木啓明奇天烈スイーツ回が2作もランクイン。そんなこと普通あるか。

色々あってバレンタイン概念が無くなる世界。パロディも織り込みつつ楽しい画づくりが愛らしい。

 

オチは男がチョコ配るのがNGなら女装すればいいという謎のオチ。

脚本家の発想がトロピカってる(『トロピカル~ジュ!プリキュア』シリーズ構成)。

 

 

10『ワールドトリガー』8話「意思」

脚本:山田瑞季 コンテ:平山美穂 畑野森生 演出:平山美穂 作画監督伊藤郁子 高橋優也 鈴木沙知 櫻井拓郎 鳥山冬美 信実節子 大野勉 増井直子

 

来たか平山美穂の時代が。

 

2016年、『魔法つかいプリキュア』で平山美穂担当回が気になった。当時の印象は「何かやりたいことがあるみたいだけどようわからん。でもなんかおもしろい」。

 

『映画おしりたんてい カレーなる事件』でサプライズ監督(たしか事前に大きく告知されてなかった)に驚いたが、もっと驚いたのは作品の出来栄えだ。間違いないこれは間違いないと確信した。

 

 

そして、イケメンが好き、それもちょっとずれたイケメンが好きなことも確信した。二宮匡貴の居る『ワールドトリガー』に参加することは必然だった気もするがその時私が「ワールドトリガー」を読んてなかったので知る由もなかった。

 

(工事中 如何に原作の読み込みが丹念で1期の味を受け継ぎつつ見事なシリーズを展開しているか、さらに8話ではそれぞれの表現が演出に直結していて、ただアニメにしただけとは全く違う、原作の意図をしっかりとアニメーションにしているということが素晴らしい名文で書かれます)

 

2016年の10選に入れた自分の目は正しかった!

話数単位で選ぶ、TVアニメ10選 完!

 

 

 

 

付記

『オッドタクシー』『PUIPUIモルカー』『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』などはとても面白く観たが「この1話」を選びにくかったので選外とした。『トロピカル〜ジュ!プリキュア』も選びたくなる回がいくつかあったがシリーズ全体の姿勢が、子供向け作品としての姿勢が今の自分には解せなくてまとめて選外とした。