「話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選」。

といったところで2024年の「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」。

今年は「アニメ映画の当たり年だなあ」と思いながら書いた。

 

1『ダンダダン』7話 「優しい世界へ」

2『ダンジョン飯』5話 「おやつ ソルベ」

3『サザエさん』8781話 「探せ!かくれんぼ」

4『響け!ユーフォニアム3』10話「つたえるアルペジオ

5『わんだふるぷりきゅあ』21話 「まゆとユキのスクールライフ」

6『義妹生活』9話 「義妹 と 日記」

7『ガールズバンドクライ』8話 「もしも君が泣くならば」

8『負けヒロインが多すぎる!』4話 「負けヒロインを覗く時 負けヒロインもまたあなたを覗いているのだ」

9『ぷにるはかわいいスライム』7話 「Sweet Bitter Summer」

10『ONE PIECE FAN LETTER』

 

 

1『ダンダダン』7話 「優しい世界へ」

脚本:瀬古浩司 絵コンテ:榎本柊斗 演出:松永浩太郎     作画監督榎本柊斗

圧巻の7話。山代風我が監督したらどんなものになるのか薄まらないか?と思っていたら、どの話数も強くて驚いているがさらに表現が突き出ている7話を選択。

 

自分はいわゆる「作画回」はあまり好きではなく、作品として調和して作品の持つ味と共鳴しているほうが繰り返し観たいと思うのだけど、その辺がしっかり結合した作品がふつうに出てくる時代になってきたなと感じる。それでも作画ファンの声に従って作画アニメを観てきたことが糧になっているなと感じる。自分の軸が増えているのと、トップクリエイターや尊敬する人と「ほぼ同じ感想」が出ることが年々増えていて、見る目が養われているなと少し安心するところがある。意識せずに感想が重なるので特にそう。

 

2『ダンジョン飯』5話 「おやつ ソルベ」

  脚本:樋口七海 絵コンテ:池田愛彩 演出:池田愛彩     作画監督:田村瑛美 清田千 萌 竹田直樹 モンスター作画監督:金子雄人

私は原作と九井諒子がとても好きで、トリガーらしい出来のいいこのアニメを、随所で首を捻りながら観た。人気が出たのは何よりも何よりで、段々と作品のテーマに寄り添う姿勢が強くなっていくようにも思えたので、右肩上がりを期待したい。

掛け値なしにテンポよく楽しい池田愛彩回を選んだ。一本単独で見て楽しめるのはこれだと思う。

 

 

 

池田愛彩は2020年「『富豪刑事』4話「空っぽのポケットほど、人生を冒険的にするものはない」」以来の選出。

 

3『サザエさん』8781話 「探せ!かくれんぼ」

  脚本:中園勇也 絵コンテ:高田ひろし 演出:德野雄士    作画監督小池達也

今年はメモリアルイヤー55周年ということで、特番もありもしやメインキャストも交代かと思っていたが今日現在そういうニュースはなかった。

ということで德野雄士回。なんで。

 

海外勢も「SAZAEトハナンダ」「TOKUNO-SAN is Back」などと反応があった。ご本人のTwitterを見ていると、なんかオファーが向こうからあったような雰囲気があったが、いつも担当話数前には告知をしてくださるのに今回だけは完全サプライズだったので実況界隈もドタバタしていた(あとで観返したらアニメディアの予定表には載っていた)。

スペシャルとはいえ、普段のサザエさんと特別違う感じではないんだけど、芸人さんたちの絵面が面白く、楽しい回になっていた。ゲストが学校に来てかくれんぼをする話で、ゆかいな絵面が多くて楽しい。サザエさんのゲスト回は案外打率が良くてこの回も穏やかながら芸人さんの味が出ててほのぼのしていた。

 

おおまかにサザエの一年を振り返るとそれほど変化はなかった気がする。

雪室城山のお二人は相変わらず健筆。雪室脚本は近年ホリカワみが減じており、カツオ中島花沢をメインに据えることが多く、城山先生はごくごく稀に物語の強めな話を書くもののやはり日常系的な枯淡の境地だ。

 

 

4『響け!ユーフォニアム3』10話 「つたえるアルペジオ

  脚本:花田十輝 絵コンテ:太田稔 演出:太田稔 北之原孝將     作画監督:岡村公平 総作画監督池田和美

ついに完結したユーフォ。自分が楽器をやってたこともあって、首を捻ることも時折あったけど、今回は特に教師の立ち位置であったり、吹奏の閉鎖性というか、タコツボ的になってしまう危うさがあって、正直ここがうまく解消できてかつ京アニナチュラルオタク性がうまいこと綺麗になっていればもっとずっと一般性を獲得したのにな、という気持ちではある。知名度は高くてもオタクの外、アニメファンの外に出ていってないように思うのでそこが残念に感じている。

それでも、後半は特に気合が入っていて、毎回スペシャル感凄かったが、画づくりが特に熱かったこの回を選出させて頂いた。

 

ところで、覆面オーディションは生徒の心に負担をかけることもそうだし、そもそも同じ釜の飯を食べてる部員同士なら、音聞けば誰の音かまず分かるので(少なくとも金管の人なら分かる)、プロのオーディション(知らない人が他所から来る)と同じようにはできないよなの感。そもそも劇中でもペットの高坂は気づいていて明らかに吹き方を変えていて大人の責任が問われるなと思ったが同じ京都アニメーションの『聲の形』でも大人たる校長は罰せられていないのでその反復なのかもしれない。

 

5『わんだふるぷりきゅあ』21話 「まゆとユキのスクールライフ」

 脚本:井上美緒 絵コンテ:手塚江美 演出:手塚江美 作画監督:赤田信人 美馬健二 上田由希子

『おしりたんてい』で活躍していた手塚江美のプリキュア回。おしりたんていを思わせるファンキーさと楽しいアニメーションで話題を呼んでいた。シリーズの中でも広末悠奈回、篠原花奈回、野呂彩芳回、土田豊回などが他に印象に残った。

わんぷり自体が久しぶりにしっかりと駆動しているプリキュアシリーズだったがその中でも目を惹くものだった。

 

 

6『義妹生活』9話 「義妹 と 日記」

脚本:広田光毅 絵コンテ:上野壮大 演出:上野壮大 小林美月 作画監督:張昀 太田衣美 澤田知世 日下岳史 宮川智恵子 Rad Plus スタジオCL 無錫月霊動画

 

ちょっとタイムラインがざわざわしていたので遅れて1話を観て驚いた。

静謐で抑制的な映像と物語を見事に実現していた。

アニメにありがちな「安易にいい話」に落ち着けない、突き放した姿勢を貫いていたのも好ましかった。淡々とした物語をただ地味にするでもなく、変にキラキラさせるわけでもなく、適切だったと思う。

話数としては少し振り返り回でもあるのだけど、美意識が散りばめられたエピソードを選出。

 

つくづく、素晴らしいシリーズだった。

 

7『ガールズバンドクライ』8話 「もしも君が泣くならば」

  脚本:花田十輝 絵コンテ:酒井和男 演出:平山美穂     作画監督山崎智

人気、話題になった作品から。ただ、非常に捉え方が難しく、脚本とプロデューサー監督で発言が食い違っていて、私は脚本のことばがいちばん正鵠を射ているように思う。

ライブシーンが頂点のひとつであるのだろうけど、ここは「イラストルック」

の画の魅力、コメディの味が生きつつドラマの高まりこのエピソードを採用。数年経ってもこのテンポ感とリズムは色褪せないと思うので、その予測も含めて。

劇、ドラマとして緊張感を持たせて、感情が載って、アニメっぽい誇張もあって、という一本。

平山美穂回の選出も度々だが初回は2016年。平山演出の特徴は顔のいいやつが珍妙なポーズを取る、がそのひとつだと思うがそれは又別の話。

 

8『負けヒロインが多すぎる!』4話 「負けヒロインを覗く時 負けヒロインもまたあなたを覗いているのだ」

脚本: 横谷昌宏 コンテ:北村翔太郎 演出:飛田剛     作画監督:竹田茜 三浦琢光 総作画監督川上哲也

大人気のシリーズから選出。シリーズ通して「均一」な印象があったのも驚いた。

最初のクライマックスで情感も豊かだった4話を選出。

 

 

9『ぷにるはかわいいスライム』7話 「Sweet Bitter Summer」

脚本: 鈴木智尋 コンテ:ちな 演出: ちな Vコンテ:土上いつき 総作画監督:田中彩

サプライズ的に『ぷにる』にちなさん登板。

ちびっ子マインドの中に潜むアニメーションの豊かさ、構図と感情表現の見事さ。

それと、やはり消し難く刻印される「一瞬の抒情」。

現代は情報量自体が激増していて天才があまりに多く、普通に余裕で埋もれるのでついつい麻痺した感覚になってしまうが

その中でも真に古典になる人のひとりが間違いなくちなさんです。これは私の人生を賭けて言える。

 

 

ちなさんはTOHOアニメーションの所属ということで積極的にトーク含め露出が多く嬉しい。

同じTOHOの松本理恵is何処。でも「元気」だったらしいからいいか!

 

 

去年じゃんか松本…元気でいるか…街には慣れたか…友達できたか……

 

 

 

そういえば、今年田中裕太が東映アニメーションを退職した。

俺も嫌だよ。俺だって嫌なんだよ。

大体プリキュアの田中さんと殆どワンピースの石谷さん。このふたりがどこかで交わればいいな、とずっと思っていた。

10『ONE PIECE FAN LETTER』

脚本:豊田百香 絵コンテ:石谷恵 森佳祐 演出:石谷恵 道端菜名実  作画監督森佳祐 林祐己

監督:石谷

ONEPIECE』の枠であるけども、スペシャルに近いこの話を選んでいいのか迷ったが、いいと信じて選出。

アニメーションの素晴らしさは今さら私が言う必要もないと思うけど、すごく良かったのはワンピースのファンがこれを全力で肯定していたこと。

 

『ルックバック』にしてもそうだけど、「一枚絵のように整った」アニメじゃなくてもOKと判断してもらえることが増えてきた1年だと思った。

一昔前だと、そういうものは拒否されるような、作り手もそれを避けるような風潮があった。今日はPV、MVで自由な絵柄のアニメーションが増えているから「慣れて」いるのだと思う。それともうひとつPVやMV、TikTokのような短尺のサービスだとその瞬間の良さで成立していれば良い。30分アニメのような長い時間の中で絵柄を整える作業とは別にオリジナル的な絵柄で最初は戸惑っても幾度も見るうちに馴染む。

昔と違ってPVやリアクションの実数が可視化されてきていることも一因ではあると思う。視聴体験自体が変容していると感じるが、自分は第一義にいいことだと思う。

 

自分はワンピースのそう熱心なファンではないけども、ファンと同じように丹念に誠実に作品を読み込んで、それで作った作品が評価されるのはとても嬉しいし、自分にとっての燃料にもなるので、ひとえにありがたい。

 

ところで、東映アニメーションの田中裕太がそういう人だった。

プリキュアが今どうにかこうにかひとつながりでいられるのは田中さんの貢献が間違いなく大きい。彼がいなければもっと散漫になっていたのは確定的に明らか。

これだけ自作を東映アニメーションで関わった作品に愛着を持っていた人が去るのをとても驚いた。*1。特に映画だけでなくシリーズで、各プリキュア作品を丹念にキャラに合ったかたちで立てながら、繋げて舗装してくれていたので、ショックは大きかった。

でも、そういう魂を継いでいる人が東映アニメーションに残っているのは希望だ。

ありがとうタナカリオン、ありがとう石谷牛乳。

 

他には『オーイ!とんぼ』『恋は双子で割り切れない』『小市民シリーズ』『合コンに行ったら女がいなかった話』『変人のサラダボウル』『らんま1/2』『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』『チ。-地球の運動について-』を楽しく観た。

その他では『天穂のサクナヒメ』『終末トレインどこへいく?』『夜のクラゲは泳げない』『ひみつのアイプリ』『勇気爆発バーンブレイバーン』『ラブライブ!スーパースター!!』『ラーメン赤猫』『菜なれ花なれ』『先輩はおとこのこ』『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』『真夜中ぱんチ』『スナックバス江』『ダンジョンの中のひと』『魔法使いになれなかった女の子の話。』を観た。

 

 

 

*1:一方で田中さんは最後の映画を作っている時にあまりにも疲弊しきっていて、それとこれ以上やり切ることが東映アニメに居て果たしてあるのかとさえ思ったし、また公開後のトークイベントで他の方がちょっと私的には看過しがたい発言をしていて(勿論田中さんはそれで怒ったりはしなかった。私の一人相撲だ)、それを覚えていたので辞めたのもわかるなとも思った