話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選
『魔法つかいプリキュア!』22話「芽生える新たな伝説!キュアフェリーチェ誕生!」
『Go!プリンセスプリキュア』50話「はるかなる夢へ!Go!プリンセスプリキュア!」
『灰と幻想のグリムガル』2話「見習い義勇兵の長い一日」
『モブサイコ100』8話「兄ペコ 〜破壊意思〜」
『甲鉄城のカバネリ』4話「流る血潮」
『デュエル・マスターズVSRF』20話「作画崩壊SOSっ! 勝太、夢のアニメ監督デビューっ!?」
『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』 2話「運命を変える力なんて無いから
MY COLD DIMENSION」『ふらいんぐういっち』5話「使い魔の活用法」
『タイガーマスクW』6話「アイドル×ヒール」
ルール
・2016年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
オーバーザ10選(特別枠)
『魔法少女育成計画』
1話「夢と魔法の世界へようこそ!」
『魔法つかいプリキュア!』22話「芽生える新たな伝説!キュアフェリーチェ誕生!」
脚本:村山功 コンテ:平山美穂 演出:岩井隆央
直近の45話も鮮烈だった平山美穂のコンテ回。その前の7話ではコンテ演出をやっていたので、スケジュール的なものだったろうか。
それはさておき、平山美穂おもしろい!って意識した回。
戦闘後に謎の少女がはーちゃんであることが明らかになる公園のシーン。
みらいとリコが少女の正体を察する
再会を喜び二人に飛び込むはーちゃん
だが、なぜか一度離れるはーちゃん。
二人と距離を取りなおして「はーちゃんだよ」
もう1回二人の元へ飛び込むはーちゃんとそれを迎えるみらい、リコでEND。
なんでこうなったんだろう。近づいたり離れたりとにかくワンダーだ。
色んなことが想像できるが予想。
最後のショットは決めていた。みらい&リコとはーちゃんが駆け寄るラストが欲しい! でもくっついたままではそれができないから一度離れた。
はーちゃんのキャラ的にずっと離れたままでいるのは不自然で、まず抱きついてほしかった。
ここで強調したいのは、平凡なラストにだってできたろうに、これを通したということだ。離れたまんまで会話をして最後のショットに持ってきても別にそれはそれでいいだろう。
それでも、こういう画作りにしたのは、やりたいことがある人なのだということだ。おそらくはーちゃんのキャラを考えると上のような芝居になったのではないか。
他の話数を見る感じでも「キャラの個性や性格にあった動きや芝居」をさせたい人かなあと思っているので今後も注目していきたい。
東映のように長いシリーズの作品が多い会社でも、こういう個性がきっと輝くと思う。
平山美穂、注目。
『Go!プリンセスプリキュア』50話「はるかなる夢へ!Go!プリンセスプリキュア!」
脚本:田中仁 コンテ:田中裕太 演出:田中裕太
予想どおり全員が最終回に
出た。田中演出は画面の外にもちゃんとキャラが生きている。#nitiasa #precure pic.twitter.com/xkzs4BfqXd
— an_shida (@an_shida) 2016年1月30日
全てのキャラを慈しむ田中裕太と歩いた一年は幸せでした。また楽しい作品を待っている。
『灰と幻想のグリムガル』2話「見習い義勇兵の長い一日」
特筆すべきBパート。セリフを排し挿入歌の流れるなかストーリーが進む。
情報量のコントロールとしての挿入歌が「新しかった」。イメージカットを繋ぐのではなく、きっちりと出来事があり、物語が進んでいるが台詞がない。前半の展開との緩急のつけ方が見事だった。
中村監督がインタビューなどで終始「変わったことをしている意識はなかった」と語られていて、この人には映像のイデアというか、完成形、あるべきものがとらまえられているのだなと思った。
TVシリーズに限らず、次に何を見せてくれるのか、とても楽しみだ。
『モブサイコ100』8話「兄ペコ 〜破壊意思〜」
コンテ:立川譲 重原克也 演出: 大矢雄嗣 作画監督:亀田祥倫
見応えありました。微妙にずれたところの画を貼る。亀田さんのやってて楽しいぜっていう感じは好ましい。
『響けユーフォニアム』9話「ひびけ!ユーフォニアム」
意味の塊。
京アニのCMのようなストレートな比喩が続く。
香織はここでは物語の外野だからか一線が引かれている。
あすかの靴ひもを結ぶ香織。靴が新しいことに慣れていないことを口にしながらもしっかり結ぶ。
束縛するように繋ぎとめようとしているのか。
柵は距離感か。見守ることしかできない久美子、あるいは視聴者の寓意か。
ずっとタイツを履いていたあすかが素足になる。本音を吐き出すことの寓意か。
今年は『ユーフォ』を興味深く観た。『聲の形』は強い感銘を受けた。
京都アニメーションへの印象は変わることなく、2016年もそうだった。
『甲鉄城のカバネリ』4話「流る血潮」
脚本:大河内一楼 コンテ:宮地☆昌幸 演出: 渡邉徹明
「カバネリ」は4話までの敵を倒すテンプレートがきちんと出来上がって、そのまま何話かやるのかと思ったら、後半に急速にそれを崩して終わらせた。
毎週のように違う敵を倒すアイディア、見せ方のバリエーションをシリーズとして見たかった。ただこの4話までのパターンができているから、作ろうと思えば作れるだろう。そんなときもあってほしい。
1クール13話が大体基本になっている今のTVアニメの中で、多くの作品が生まれては消えていく今のTVアニメの中で、かつてのように毎週毎週流れる、テンプレートが現代的にアップデートされることを自分は常に期待している。
だからこその東映作品をよく見るし、単にとんがってるだけの作品よりは、愛すべきマンネリズムをこそ、大事にしたい。そう考えている。考えてないときもある。考えてるんじゃないかな多分。そう考えてるかもしれないからそのつもりでいておけ*1。
『デュエル・マスターズVSRF』20話「作画崩壊SOSっ! 勝太、夢のアニメ監督デビューっ!?」
脚本:大知慶一郎 コンテ:山岡実 演出:山岡実
作画崩壊回。誰得という言葉を強く思わせる一本。
2016年というアニメ制作が近年にもまして話題になった年の、SMAP解散報道の日に、放映されたことで時代との一体感を感じた。わりと軽い気持ちでSMAP謝罪会見をパロディにしたと思うが、偶然ってあるものだ。
ちなみにコミケの待機列で観たが周囲との一体感は「絶無」に近かった。まじで全然誰も観てなくて、少子化の時代のキッズアニメは大変だと思った(社会派)。
『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』 2話「運命を変える力なんて無いから
MY COLD DIMENSION」
脚本:高木登 コンテ:黒木美幸 演出:黒木美幸
本シリーズは途中までの視聴で残念だったが、実際に観た中での選定。
黒木美幸のアニメは「リズム」だ。
仮に作画が充実していなくても、画面を持たせる画作りができる。昨年の『すべてがFになる』9話もとても印象的な画作りがいくつもあった。
来年も楽しみにしたい。
『ふらいんぐういっち』5話「使い魔の活用法」
おさげ髪の那央が可愛くて、梶尾真治の「エマノン」シリーズをこのスタッフで作ってくれたらそれはそれで嬉しいなとか思いながら楽しく観た。視点の面白さ。
『タイガーマスクW』
6話「アイドル×ヒール」
脚本:浦沢義雄 コンテ: 勝間田具治 演出: 勝間田具治
アイドル回なのに、浦沢脚本、勝間田演出をぶつけてくる東映の座組は相変わらずファンキーストライクだ。話は東映らしいむちゃくちゃ感あふれるもの。
自分であらすじをまとめてみた。
アイドル「生ハムと焼うどん」が新日本プロレス沖縄大会にやって来た。だが「やる気がない」ツイートをして女性ファンの怒りを買い、炎上してしまうが全く反省しないので会場は大荒れになる*2。
その騒動とは特に関係なくヒールレスラー「ゴリラージェットシン」が突如乱入して暴れ出し、あわやアイドルに手をかけようというところで、タイガーが助けに来て勝利を収める。
試合後、プロレス愛があるなら歌を聞け、というオカダのマイクパフォーマンスでイベントは丸く収まる*3。丸く収まるがゴリラージェットシンはマジで危ない人だったので終了後に挨拶に行っても威嚇されるのであった。丸く収まるがタイガーはタイガーで朝に「汗くさそう」「猫みたい」と言われたことを根に持っており、そのことをを指摘された「生うどん」は、ほうほうのていで逃げ出すのだった。
そしてこれまた特に何の関係もなく、春奈は可愛いタイガーグッズのサンプルを自主的に作っていて、わざわざ沖縄まで見せに来るが、売れ行きに不安を感じたタイガーは黙って夜の海を見つめる。
新日本プロレスは今日も大さわぎだ。
なんだこれ。
浦沢投石も当然ある。
先日のニコ生連続上映会では『カブトボーグ』のロイド安藤オマージュと思われる「石投げちゃお」がコメントで出るほどと言えば、その意味不明ぶりがおわかりいただけるだろうか。ニコ生では5分おきぐらいに「なんだこの回」「浦沢か、仕方ない」が繰り返されていて、心の浦沢センサーの感度によって気づくタイミングが違っていた。だから何だ。
また、若松龍がローリングキーロックをしすぎて疲れたところ両肩がマットについてしまって、そのまま負けるという、常人には理解できない展開が序盤にあるが、これも特に伏線とかではない。*4
他にも「新日本リングが混浴状態に」「混浴?」「いや混乱状態」とか
「きっと優しいゴリラよ」などの浦沢感あふれる謎の台詞もきちんと残す感じが実に、らしい。
決してスーパークオリティではないにしろ、この回を繰り出してきて、少なくとも炎上騒ぎにはならない(ファンが本気で怒らない)かたちに収めているのは立派な、偉いことではないだろうか。本当にそうだろうか。
ところで来年以降も覚えておきたいカットがこれだ。
実在するプロレスラー、実在するアイドルが登場する今日のタイガーマスクW6話ですが、実在する演出助手も勝手に登場させてます!
— 香川久 (@DanngoDaisuki) 2016年11月5日
6話で頑張ったくれた2人を、モブキャラの中に潜ませました。普段あまりこーゆーのはしませんが、たまには良いかな…なんて(^^;;似せるのに以外と時間かけてます
朝倉舞彩、篠原花奈を覚えておきたい。きっと活躍するだろう。なんだかんだで東映は女性スタッフが成長する現場だなー楽しみだなーとかも思っている。
オーバーザ10選(特別枠)
『魔法少女育成計画』1話「夢と魔法の世界へようこそ!」
ありがとう。
ありがとう
ありがとう
この世界の片隅に
うちを見つけてくれて
「この世界の片隅に」CM放送開始の画像(4/5) :: for Miss Brain Year
*1:関白宣言のうろ覚えパロディであり、煽ってるわけはない
*2:彼女たちも厳しいアイドル界を生き抜くヤングライオンに違いない。ここですんなり反省してしまうようでは一流のアイドルなど、到底無理だ。若い読者しょくんにはなかなかご理解いただけないかもしれないが、この態度もやむを得ない面があるということをわかってほしい。それは戦う者の生き様なのだ。私もアメリカ武者修行時代には心ない観客から辛い仕打ちを受けたこともあったが、そんなことでめげているようなヤワな心の持ち主では、リングという四角いジャングルを生き抜くことは到底できないのだ! アントニオ猪木談
*3:プロレス愛がないのは怒った観客ではなく、「生ハムと焼うどん」のほうだが
*4:2000年代初頭の新日本(だったと思う)でグラウンドで攻めているほうの両肩がついていて即座に負けるという不透明決着があったと記憶している。健介か藤田が絡んでいたように思う。ところで新日本が長い低迷期を超えて今、普通に若い人に支持されているのはとても素晴らしいことだと思う。