浜村淳『この世界の片隅に』を語る~

毎日放送のラジオ番組「ありがとう浜村淳です」11月30日回の『この世界の片隅に』部分を文字おこししました。

※映画本編の内容にドカン、ドカン、ドカン! 触れています。未見の方はご注意ください。

ありがとう浜村淳です (11/30) - YouTube

 

 

浜村 昨日メッセージをいただきましてね。

「浜村さん、『この世界の片隅に』をまだ紹介してない。早よ紹介せえ、やれ! 今日せえ明日せえ明後日はやれ!」とそういうお便りをいただきました。
鳥居 ああ。そうですか。


浜村 毎日放送のお隣、ロフトの地下でね、上映中なんです。うちの番組の藤井ディレクターが3回も4回も行ったんですって。
鳥居 え、ほんとに。
浜村 ほんとに。行くたんびに満席で、入れなかったんやそうです。
鳥居 今ねえ、SNSですごい盛り上がってるというのかな、すごい話題になってるんですよ今。
浜村 藤井ディレクターはあの背の高い体をね、七つ八つに折って「是非入れてくれ」言うたそうですが…。
鳥居 ああ、七つ八つに折っても大きいからねえ。ちょっと無理やねえ。
浜村 今向こうで居ってますけどね、居っても大きい。「あんたみたいに大きい人はねえ、満員の映画館にはちょっと無理です」と言われて行ってないんです。わたくしは見てるんですけどもね、これ実は鳥居さん。
鳥居 はい。

 

浜村 こうの史代さんという方がお描きになった……、アニメなんですねえ。それをね、片渕須直さんという監督。脚本も監督も兼ねまして、何としてでも映画にしたいと。…お金がないんです。
鳥居 ええ。
浜村 つまり大手の映画会社が乗ってくれないと。そこで一般の皆さんに資金を、制作費を募集したんです。そしたら三千万円以上集まったそうです。これでねえ、映画できた。ひじょうに、よい出来です。ただ宣伝する余分のお金がない。
鳥居 そうですねえ。

 

浜村 だからテレビのコマーシャル、出たかな? 一遍も出てないんじゃないですか。これね、ここにすずさんという十八歳の少女が居りましてね、画がものすご綺麗です。リアルです。

すずさんね、十八歳でね、自分がまだ気持ちも決められないうちに昭和十九年の二月、広島県呉にお嫁に行ったんですよ。相手は日本の海軍の軍人の一人でね、呉の港が戦艦大和を建設中だったそうです。見知らぬ土地でね、北條という男性、親も小姑もみんな一緒の暮らしです。

そこですずちゃんはね、懸命に懸命に尽くしましてね。洗濯、炊事、お掃除。まずね、近くの共同井戸へ行って、いっぱい水汲んで。朝早いですよ、四時五時からね、それから一日が始まるんです。ずいぶんね、嫁ぎ先のために尽くしました。

そしたらね、夫の姉が、よそにお嫁に行ったその姉が義理の姉ですね、小姑ですね。小さなこどもを連れて出戻りしてくる。よけい嫁としてはやりにくいじゃないですか。

鳥居 ううん、うん。
浜村 それでもね、食料のないころは一生懸命工夫して工夫してね、ええ嫁さんですよ。またすずちゃんの声をね、のんってわかりますか。
鳥居 はい。

 

浜村 能年玲奈をね、監督が「あまちゃん」観ていて声に惚れ込みましてね。ぜひこのすずちゃんの声やってくれ言うて引っ張り出したんですよ。で、主人公のすずちゃんはある日ふと道に迷ってね、遊郭に迷いこんで遊女の若い女の子の辛い境遇を知ったりね。

また軍艦に乗ってる水兵さんに出会う。その水兵さんが小学校の同級生なんですね。太平洋戦争の真っ最中の、あの怖い怖い、絶えずアメリカの飛行機が飛んできて爆弾落としますね。物がない時代です。すずちゃんが工夫して家族のために色んな食料を工夫して、みんなが喜んで食べられるようにしたり。着るもんもないから、古ぅくなった着物や洋服を直したりね。よい嫁ですよ。

 

こんなすずちゃんが、昭和二十年三月。広島県呉はね、空が見えないほどアメリカの飛行機が飛んできてる。ドカン、ドカン、ドカン。爆弾を落としますね。命がけですよ。それでもなんとか生き延びた。そして最終、ラストシーンに迎えるのが、むっちゃん。昭和二十年八月六日、広島に原爆が落とされた日です。これによってすずちゃんの運命はどうなったか。これはもうロフトの地下にある映画館が何回行っても満員になるほど、感動の作品になってますね。
鳥居 ええ。そうですか。
浜村 『この世界の片隅に』。まず画が実にリアルでうつくしい。そこへすずちゃんの姿が、いじらしいほどかわいらしいほどよくできた、若い嫁ですよね。十八歳、十九歳の嫁やります。で、観てね、感動の涙が止まらないくらいです。いつまでやってるのか、そこまで確かめておりませんが。
鳥居 また後で調べてみましょう。
浜村 そうですね。毎日放送のお隣、ロフトの地下でやっておりますんで、ご覧ください。また戦争というものにね、改めて考えさせられます。

 

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