浜村淳、またまた『この世界の片隅に』を語る~おおさかシネマフェスティバル授賞式

毎日放送のラジオ番組「ありがとう浜村淳です」3月6日回の『この世界の片隅に』部分を文字おこししました。 

※映画本編の内容にものすご触れています。未見未読の方はご注意ください。

ありがとう浜村淳です (3/6) - YouTube

浜村 昨日、大阪の堂島にありますホテルエルセラーンで「おおさかシネマフェスティバル」の発表授賞式が行われまして。
佐々木 ええ。
浜村 このホテルがいつも言いますとおり、お洒落。

(中略)

 

浜村 その他に作品賞。アニメーションです。この世界の片隅で。
佐々木 この世界の片隅「に」?
浜村 片隅に。『この世界の片隅に』。えー、確かにそう。大阪日日新聞にそう書いてあります。わたくし喋ってるうちはねえ、司会してるうちは間違わないんです。
佐々木 (笑)。

 


浜村 こうたくさんの人々のエピソードを語り始めると、ようタイトル間違え…、よう似とるからねえ。
佐々木 そうですねえ。
浜村 『この世界の片隅に』。作りました片渕須直監督は枚方市の人です。お祖父ちゃんが枚方市の駅前で映画館をやってはった。
佐々木 へえー。

 

浜村 で、まあ映画好きですねえ。小っちゃい頃からこの番組をずっと聴いていた。で、監督さん言いました。この映画『この世界の片隅に』ですね、原作あるんですよ。映画にしようと思って完成まで6年かかったというね。何が原因でそんな長い年月(としつき)かかったんですかと聞いたら、製作資金がまるで集まらなかった。
佐々木 はい。
浜村 脚本持ってねえ、お金出してくれる大手の会社持って回ったけど「こんな映画で客来るかい」言われてポイ、なんですて。「こんな地味な話で客来るわけないやろ、うちは金出さへんで」、これで終いやったそうで。そこで監督考えた。一般の皆さんに呼びかけた。いい話なんですこれ。良い映画にしますから賛同される方は5円でも十円でも結構です。寄付してください。言うたら四千万円集まったそうです。これでこの映画完成したわけですねえ。始め25、6の映画館しか上映してくれなかった。今300館です。
佐々木 ええ。全国でねえ。

 

浜村 もう評判が評判呼んでね。うわーっとお客さん増えたんです。で、これ作品賞です。今年の「おおさかシネマフェスティバル」の作品賞ですねえ。これはねえ、そんな激しい物語やないんで、脚本読んだ大手の会社ね「こら地味や。客来いひんで。金はよう出さん」、言うはずですわ。ただね、ここにすずちゃんという名前の女の子がおりまして18歳で親の勧めるまんまに呉の街へ嫁へ行くわけです。
佐々木 ええ。

 

浜村 そこでお姑さん、お舅さん、婿さんみんな優しかった。よかった。ところが婿さんのお姉さんだけが意地悪なんですね。こういう映画ねえ、よい人ばっかり出していては面白くない。ドラマチックにならない。中にこの悪役を入れるんですね。お姉さん、ご主人とうまくいかなくてね、ちっちゃな女の子連れて。すぐ実家へ戻ってきて、一遍戻ってきたら居座るわけですよ。
佐々木 うん。
浜村 舅、姑、婿さんに仕えながらお義姉さん、婿さんのお姉さんですね。小姑と言います昔は。その人の意地悪に耐えてね、すずちゃんは運命に逆らわない、運命のまんまに素直に生きていくというね、この姿が泣かせるんです。特に戦争始まった、自分が嫁入りのときに持ってきた一流の着物を鋏でずたずた切ってもんぺを作るそれで。そんな着物しか着られないわけです戦争中は。そんな振袖とかね。
佐々木 ああ。そうやねえ。

 

浜村 そんなん絶対着られない。ズタ、ズタと鋏で切ってもんぺ作ったりね。それから食料がもうないわけです。すると工夫して工夫してね、ちょっとのお米を、水足してふやかしてふやかしてお茶碗に山盛りになるぐらいご飯作って。でもふやかしたんですよ、腹の足しにはならない。そこにハコベ入れたりスミレ入れたりね、色んな方法でおかずを作ったり。この場面が延々と続きます。いかに食べるということは人間だけやないですね。動物全部にとって大問題ですよ。戦争中ですから食料がない。それをすずちゃんはね、工夫して工夫して工夫してね、切り抜けていくの。ええ嫁ですよこれがまた。その姿があまりにもいじらしくてね、泣いてしまうんですよ、観ていて。絵が、ものすごく丁寧でね、アニメの絵とは思えない。リアルなんです。現実と思えるぐらい、上手い丁寧な絵ですね。そのうちね、意地悪なお義姉さん、婿はんの姉ですね。姉が連れてきた晴美ちゃんという、5つ6つの子供を連れて外出したときアメリカの飛行機が空が真っ暗になるほどうわーっと襲ってきて、ドカドカドカドカドカーン、ドカーンと爆弾を落とすんですね。
佐々木 はい。

 

浜村 それで自分が連れていたお義姉ちゃんの娘、5つか6つの晴美ちゃん、死にました。すずちゃん自身はね、手首吹っ飛ばされるんですよ。そうするとね、もう右の手使えないですね。この子がすずちゃんが、大変絵が上手い。しょっちゅう色んな絵を描くんです、上手いんですこれ。段々畑に座ってね、向こうに見える呉の海を眺めながら海に浮かんでる戦艦大和、戦艦武蔵。そういった絵を写生したりするのが楽しみ。ところが軍隊の中に警察があります。これ憲兵と言うんですね、憲兵二人がやってきて「何描いとるんじゃ貴様、敵国のスパイだろ!」。港、海軍の港の絵を描いてるもんですからスパイだろ言うてひどい目にあわす場面もあります。右手首吹っ飛ばされたら絵を描けない。それでもね、恨んだり怒ったりしないで今度は左手にペン、鉛筆持って絵を描き始める。本当に運命に対して逆らわない、いじらしいかわいい女の子をやりましてね。それもね、さあ泣けよ、かわいそうやろ、泣けよという作り方やないんです。淡々と! 描いてます。あるがままに。そんで余計泣かせるんですよね。という『この世界の片隅に』作品賞です。

 

佐々木 はい。
浜村 監督もね、片渕須直監督もえらい喜んでおりましてね。このインタビューでわたくし間違えたんです。監督、昨日NHKのテレビで30分番組監督主演主役で作りましたの、僕見たんですよ。言うたら「昨日やない、おとといです」。
佐々木 (笑)。
浜村 ハッハッハ。ようけ喋らないかんことが多いとね、間違えるんですよね。でもね、本当に良かったと思いますよ。多くの人々、作品が大阪つながりなんですよね。
佐々木 嬉しいですよね。

 

浜村 嬉しいですよ本当に。みんなみんなね、よく語ってくれてよく感動してくれました。他にも言いたいこといっぱいありますが、『この世界の片隅に』のテーマ曲は「悲しくてやりきれない」。これ誰の歌か知ってますか? フォーククルセイダーズの歌なんですよ。先に曲ができて、後からサトウハチローさんが詩をつけた。これがメインテーマですが、その他の分はぜんぶコトリンゴという人の作曲なんですよ。昨日お母さんと来ました、コトリンゴさん。川西の人なんです。
佐々木 ああ、そうですか。

 

浜村 そうなんです。学校の名前もぜんぶ言うてくれたんですけどね、これまた大勢の人々の前でこっちも次の人の質問考えたりしてるもんですから、学校の名前をうっかり聞き忘れましたがね、この人も要するに関西の人。それでお母さんと一緒に来ました。こういう風にしてね「おおさかシネマフェスティバル」は本当に大阪、関西のカラーが強かった。よかったですねえ。特に大きな声で言いたいのはいっぱいありますが、『この世界の片隅に』ですずちゃんの声を演った能年玲奈、のん。実に上手かったですねえ。声だけの出演です。
佐々木 ええ、ええ。

 

浜村 ご覧になった方も頷いてくださると思うんですが、上手かったねえ。ところがプロダクションを移るゴタゴタがあってねえ、来られなかったんだ。残念でした、本当に。もう「あまちゃん」でスターになってね、それからずいぶん活躍しましたね。プロダクションを移籍するですか、何かそんなゴタゴタがあって来られないんですよ。この映画ご覧になった方は、のんの声が台詞がね、実に上手かったことは覚えていらっしゃると思います。

 

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