「話数単位で選ぶ、2025年TVアニメ10選」。

といったところで2025年の「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」。

今年は「アニメ映画の当たり年だなあ。」とか思いながら書いた。TVアニメを観るのが大変だった、エンジンかかるまですごい時間かかった。それと今回は個人的なチョイスが多くて「数年経つと忘れてしまうかもしれない、キラリと光る話数」はあまり選べてないと思う。

 

1『アポカリプスホテル』11話 「穴は掘っても空けるなシフト!」

2『真・侍伝 YAIBA』6話 「いきなりバットガイノ巻」

3『瑠璃の宝石』9話 「190万トンのタイムカプセル」

4『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』11話 「アルファ殺したち」

5『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』8話 「海老天の尻尾」

6『薫る花は凛と咲く』8話「感情の正体 The Meaning of These Feelings」

7『その着せ替え人形は恋をする Season 2』17話「8億」

8『誰ソ彼ホテル』10話「隠し部屋」

9『サザエさん』8927話 「マスオの大事な日」

10『BanG Dream! Ave Mujica』12話 「Fluctuat nec mergitur.」

 

1『アポカリプスホテル』11話 「穴は掘っても空けるなシフト!」

脚本:村越繁 絵コンテ:廖程芝 演出:廖程芝 春藤佳奈 城戸康平 西願宏子 谷本頼洋
   作画監督
村田駿 井上廉太 新村杏子 西願宏子 長沼智也 王國年 KAGO 岡崎滉 滝吾郎 矢永沙織 前川葵 塚本あかね 李信英 槙田路子 雷  総作画監督野田康行

    

人類が死に絶えた地球に残されたアンドロイドたちがホテルを営業する物語。

 

それまでの話数は宇宙人が訪れるしホテルの従業員たちも賑やかで「寂」な感じは随所にあるにとどまっていた。休暇をもらったヤチヨは探し物をするために誰もいない街を歩くことになる。

このエピソードでは淡々と緩やかに人類はいない世界を描いていて、それまでの賑やかすぎるくらい賑やかな、なんだよこのお祭り回はという騒がしさたちとの落差があり心に残った。他には突き抜けて振り切った最終話も良かった*1

 

2『真・侍伝 YAIBA』6話 「いきなりバットガイノ巻」

脚本:河口友美     絵コンテ:德野雄士 演出:德野雄士 作画監督:前並武志

青山剛昌の冒険バトルマンガの再アニメ化(初代は93年)。

前並武志一人作画回。

 

アニメって人が少しずつ少しずつ作ってるんだなあということを改めてしみじみと感じた。

世の中には、とにかくハイクォリティだったり個性的な話数はいくつもあるだろうし、一人原画回も沢山ある。

でも、この一本は90年代の青山剛昌や少年サンデーの雰囲気や、あの頃のアニメの感じがすごく生きている。それがごく少数の、2025年のスタッフで作られていること、そして今年放映されたことが記憶に残った。うまく伝わるかわからないけど、子供の頃に学校から帰ってアニメを見てたような、当時の気持ちがよみがえったのは、このアニメが全てにおいて一貫してたからなんだろうと思う。

最も理想的な鑑賞は「今日は普通だったな。普通に面白かったけど昔のマンガだから、時代を感じる展開や会話もあったな」と色々考えたり呟いたりしながらスタッフロールを見ることではないか。

このように。

3『瑠璃の宝石』9話 「190万トンのタイムカプセル」

脚本:谷内直人    絵コンテ:みとん 演出:みとん 作画監督:渡辺暁子 柳本鈴菜 車昊大橋知華 みとん 飛鴻動畫(RAI、Yaya)

鉱物採集の魅力に引き寄せられていく高校生の物語。

オパールを採集する話。みとんコンテ演出回。

どのカットどのシーンも煌めくように入念で結実したものがあった。

映像のテンポ感など、自分の目線を調整して改めたこともあったが、それでもひときわの熱量の高さで。

正直言うとどの話数も選びたかった。

 

 

4『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』11話 「アルファ殺したち」

脚本:榎戸洋司     絵コンテ:上村泰 鶴巻和哉 演出:伊藤慎之助

キャラクター作画監督:伊藤瑞希 中尾高之 メカニック作画監督:小松英司鈴木勘太森寛之

 

機動戦士ガンダム」のIF世界を、エヴァンゲリオンスタジオカラーが作る。

中高年を中心に非常に話題になった本作*2。映画館で先行編集版の「Beginning」を見て笑い転げて2回目にようやく「こいつ、ストーリーがあるぞ!?」と気づいた。

結局鶴巻榎戸で考えるとブレはなく、自分もかなり初期から「マチュの話だ」と分かってはいたのだけど、意見具申した弊社社長(固有名詞)的なシーンが随所に投入されたので翻弄されにされされて、3ヶ月ゆかいだった。

鶴巻榎戸的な物語とそれら「悪ふざけに近い贅沢な『遊び』」の相克が続くと思っていたところに、ラスト前のこの話数TMネットワークが流れてようやく「いやこれ鶴巻さんもお祭りをやりたいんだ!」と気づいて色々と腑に落ちた。だから、この話数が特段優れているというよりは、その本気で今までガイナックスがやってきた悪ふざけと紙一重の表現を鶴巻さんがやりたがってるんだと実感できて、印象に残ったのでちょっと個人的な選出になる。

 

追記 本筋の物語、省略をかなり大胆にしているけど、私には「成立」してると確信できる。だけども年齢を問わず「説明不足」「分からない」という反応があり、それはそうだなとは思う。その一方で若い人でも「充分わかった」「不足とは思わなかった」と言う人が複数いて、ちょっとフリクリの頃を思い出した。要はきちっと説明が作中でなされた作品は面白い、だけども断片的であっても「繋がれば」人はそれを面白いとか十分とか感じることができる。そういう、説明の余地が多分に残った物語の存在に触れているか、認めるかの話ではないかと思いました。

 

5『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』8話 「海老天の尻尾」

監督・脚本・制作:亀山陽平  制作進行:SOU367 背景モデリングアシスタント:侑樹です。ライティング・コンポジット・動画編集アシスタント:働く場所を間違えた人 プロップモデリングアシスタント:神そんにゃ

宇宙を走る列車の清掃をする少年少女たちがトラブルに巻き込まれ帰還を目指す話。

 

このシリーズの前身的なPV『ミルキーハイウェイ』を観たのはパイロットフィルムフェスティバルというイベントでその時から楽しさが溢れていた。

Twitterでも話題になり大人気で劇場版も決定されたけど、テンポ感と情報の開示の仕方が上手くて若い監督さんかっこいいなあと思い選択。7話の「音ハメ」(好きではない言葉だ)が話題になっていたけど、そこにとどまるレベルではない編集の気持ちよさがあるクリエイターだ。

この話数はSF的な設定とキャラクターの関係を短い時間で描いていた、その見事さが記憶に残り選出。マキナのフィルターが詰まって煙が出て女性陣と男性陣に分かれて会話が進む。マキナがふつうのアンドロイドではないことが語られつつ、フィルターまわりはどうも非常にデリケートなもので、恥ずかしがったり訊くのをためらったりするらしいことがわかるし、しっかりしていると思われていたマキナがその辺りは雑で、チハルが逆に面倒を見ているような雰囲気。

また、カナタがそのへんには疎くて、他のキャラよりも「こどもっぽい」ことを短い時間で見せている。同時にアカネにとってカナタが「海老天の尻尾」であってふたりの恋愛とも親分子分ともちょっと違う関係だということも説明される。これらがさりげなくさりげなく短い時間で示されている。

よく、本当によくできた作品!

 

6『薫る花は凛と咲く』8話「感情の正体 The Meaning of These Feelings」

脚本:加藤穂乃伽    絵コンテ:都築遥 演出:都築遥 作画監督:小泉初栄 河合拓也

マガジンポケット連載の青春恋愛マンガのアニメ化。本ブログ強推しの黒木美幸監督作品。

 

物語序盤の諸問題が一段落して、垣根があった二つの高校「千鳥」「桔梗」の生徒同士が親交を深めていく。その中で主人公のひとり凛太郎が薫子への気持ちに気づくさまをやわらかく描いていた。

 

7『その着せ替え人形は恋をする Season 2』17話「8億」

脚本:冨田頼子    絵コンテ:若林信 演出:小室裕一郎 作画監督山崎淳 有間涼太 h.s 八重樫洋平 総作画監督石田一山崎淳 八重樫洋平

ヤングガンガン連載の人気マンガアニメ化の2期。

 

ヒロイン海夢が新菜にお弁当を作ったり、新しいコスプレに挑戦する話。

若林信コンテ回。恋をするテンションの高さと映像表現の自在さが相まって、ただ素晴らしい。

マンガ原作のコマを利用するところがあるけど、単に奇手として使うのではなく、アニメーションの良さ、旨味に収束されていくところなど溜息が出る。

 

8『誰ソ彼ホテル』10話「隠し部屋」

脚本:笹野恵  絵コンテ:きみやしげる 演出:きみやしげる 作画監督:手島典子 梶浦紳一郎 反町司 総作画監督:針場裕子 原田峰文 薮田裕希 上原史也

人気ゲームのアニメ化。塚原音子は死者の訪れる不思議なホテルに迷い込む。

 

プレイして楽しんでいた作品のアニメ化。決して最上のクオリティではないと思うけど、作品を大事にしてくれている感じが随所にあって、違和感を覚えることが全くなかった。この10話はヴィラン大外聖生と対峙する決意の回で、特殊ED含めて作り手の意欲を感じられた。多分普通に見ると普通のアニメだろうけど、自分には良い時間だった。間違いなく。

 

9『サザエさん』8927話 「マスオの大事な日」

脚本:いながわ亜美  演出:神原雄二 作画監督:小田祐莉

「国民的」とされるサザエさんの世代交代が微妙に進んでいる。若手脚本家の諸橋隼人さんが参加して数年、今年はさらに「いながわ亜美」さんが参加。初参加の話数でアナゴさんを演じる若本規夫独特の節回しを引き出していた。

 

10『BanG Dream! Ave Mujica』12話 「Fluctuat nec mergitur.」

脚本:綾奈ゆにこ  絵コンテ岡こずえ 演出:岡こずえ 作画監督:大森大地 CGディレクター:大森大地

バンドリシリーズのひとつ。結成して即メジャーになったAveMujicaとメンバーの物語。また前作のバンドMyGoとも絡み合う。

 

「至極まっとうな、ふつうの回」であることが印象に残った。

どういうことかというと。

BanG Dream! Ave Mujica』は、ストーリーが予想外の方向に流れていって賛否両論があった。ようやくここで問題が一応の解決をして収まる話数だがそこが「綺麗すぎる」ことが引っかかった。

インタビューから見える感じだと一度できあがった話を「スクラップ&ビルド」で作り直したという。二つの物語があったということになる(共通する部分もあるだろうし、完全に分離した話とはいえないかもしれない)。

各話脚本に殆ど参加していないシリーズ構成の方(新しい物語のほうに否定的なコメントを出していた)がこの話数担当だが、思い切り圧縮して独断で言い切ってしまうと、つまりこれは「元のお話のまま」なのではないか。作中で濃厚に描かれた血筋や人物の内面の描写、突飛な展開とは違うストーリーが元々あってこの話数はほぼそのままなのではないか。

文量の関係でここで語り尽くすことは難しいけど、ひとつの傍証としめ祥子の父がゴミ出しを近所の主婦に咎められているカットがある。

シリーズであれだけ長く「血の話」をしていたら、父のことをわずかでも語っておかないと、なかなか収まりが悪いんじゃないか。結果として無為だとしても。だから、私は元々それほど「血の話」は大きくなくて祥子と初華のふたりの問題が主眼だったように思っている。

いずれにしても言いたいのは、この話数がそれまでとテイストもアプローチも性格が違うと感じられるところだ。

例えばマルチシナリオで分岐しても、終章は共通しているような印象。そう考えると色々と腑に落ちるところはあるものの、本筋のルートの物語を知らないまま、収まりよく収まってしまった感もあり何とも言えない余韻が残る。

インタビューだと「意外な展開」になることを重視していたそうなので、私の捉え方だと、「最後に居場所=バンドを見つけるMyGo」と「何か(血筋や、生まれながらの才能)に縛られているメンバーが、物語冒頭から結成されているバンドにも縛られて、そこから逃れられないAveMujica」が綺麗に対照になっていたのだと思う。

良くも悪くも「整ってはいない」話数や物語が賛否や魅力を生み出していたシリーズから、(比較的)「普通」の回を選ぶこと。

突出した話数を選ぶこの催しで「突出していない」話数を選ぶことに意味があるのもなかなかレアなことだと思う。

言いたいことは、この話数は凄く力を込めていいものを作ろうとするだけでは多分作れない。さりとて、意表を突くことだけを狙っても作れない。ワンクールアニメを瞬間瞬間で必死に生きたその果てにできた凸凹、今回何故か「普通の話」のほうが特異に見える、それが面白かった。

 

その他のアニメについて

観て楽しんだ作品として『俺だけレベルアップな件 Season 2 -Arise from the Shadow-』(やや過言だけど世界の共通語的作品)、『カラオケ行こ!』(和山やま作品!)、『キミとアイドルプリキュア!』(珍しく「均質化」されてないごった煮的なプリキュア)、『クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。』(肩の力を抜いて楽しめた)、『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』、『サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと』(楽しい。これも海外人気)、『Turkey!』(二投目があるボウリングアニメ。競技の組み込み方が微妙な絶妙さ)、『前橋ウィッチーズ』(間違いなく現代的な作品だけど、演出と長台詞、画つくりが噛み合っているのかな?という疑問は結構あった。)、『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』などがあった。

 

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*1:ちなみに賛否両論の10話、単体として面白いは面白いけども「お客様をお迎えしてもてなす」というホテルの方針と「死体の隠蔽」がバッティングしていて、これが続編とか完全番外編なら良いものの、オリジナル1クールアニメの一編として考えるとミスマッチに思う。

*2:非常にTwitterYoutube考察では話題になってたけど私の観測では海外勢、国内10代20代勢の食いつきはそこまででもなかった

*3:この時期にひっそりと明記しておきたいのが『メダリスト』で、褒めている人は多いが上手くいっていないと思う。私のなかではかなり『チェンソーマン』寄りで、破綻なく一定の水準をクリアしているがマンガからアニメーションへの変換がうまくいってないと感じていて、要は作品の魅力が十全に伝わっていないと考えている。。もちろん観る人が満足していればそれ以上のことはないけども100円玉を溶かして5円玉を錬成しているような気分。