話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選

 今年も参加。

 

HUGっと!プリキュア』』37話「未来へ!プリキュア・オール・フォー・ユー!」

ゾンビランドサガ』』2話「I♡HIPHOP SAGA」

やがて君になる』6話「言葉は閉じ込めて/言葉で閉じ込めて」

ヴァイオレット・エヴァーガーデン』6話「どこかの星空の下で」 

レイトン ミステリー探偵社 〜カトリーのナゾトキファイル〜』15話「カトリーエイルとミステリーサークル」

サザエさん』7735話「わたしの天職」

ヤマノススメ サードシーズン』10話「すれちがう季節」

宇宙よりも遠い場所』12話「宇宙よりも遠い場所

僕のヒーローアカデミア』41話(三期3話)「洸汰くん」

ゲゲゲの鬼太郎』(第6シーズン)20話「妖花の記憶」

 

 

 

1『HUGっと!プリキュア』』37話「未来へ!プリキュア・オール・フォー・ユー!」

脚本:村山功 コンテ:田中裕太 演出:田中裕太 作画監督青山充

This is タナカリオンといった感じの一本。コンセプトはTVシリーズプリキュアオールスターをやるというものだが田中裕太らしさが溢れている。

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作画も動かすところは動かすが、枚数を使わずに見せ方を工夫するとところがよく出ていた。

声なしのキャラを不自然に見えさせない工夫、しかも所作や技でそのキャラの個性を出している。それぞれの繰り出す技も過去作のオマージュではなく、設定と過去のエピソードを踏まえたもので、彼の中ではカメラが回っていなくてもキャラがずっと生きている。

圧巻は自身が監督を務めたプリンセスプリキュアの登場シーンだ。プリンセスプリキュアプリキュアオールスターの中でどんな立ち位置なのか示した作品は今まで一本もなかった。プリキュアのなかにあっても彼女たちはプリンセスなのだ。

きっと制約がいっぱいあった。その中でも面白い作品を作れる田中裕太は、真の意味で東映のマエストロだ。ありがとう。

 

2『ゾンビランドサガ』2話「I♡HIPHOP SAGA」

脚本:村越繁 コンテ:石田貴史 演出:石田貴史 作画監督大島美和、和田伸一、仁井学、二松真理、首藤武

 

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圧巻のラップシーン。来年は本格的に「ヒプノシスマイク」のアニメが出るんじゃないかなとか思ってるが、そこは既に佐賀県が通った道だ!みたいな。よう知らん。モブラッパー役で武内駿輔さんが出てるのもクレイジーだ。佐賀県は今日も大さわぎだ。

 

3『やがて君になる』6話「言葉は閉じ込めて/言葉で閉じ込めて」

脚本:花田十輝コンテ:あおきえい 演出:渡部周 作画監督:仁井学

圧巻のあおきえいコンテの素晴らしい映像化。あおきえいの過去作よりもあおきえい度が高いとさえ感じた。TVシリーズを見ることの楽しさは、性質の違うものが入ってきて異質なまま強い存在感を示してかつ調和しているものを見つける喜びがあることだ。

 

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アバンからただ事ではない。

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終盤などはワンカットごとにズシン!と音が鳴るほどの力強さだった。

4『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』6話「どこかの星空の下で」

脚本:浦畑達彦「どこかの星空の下で」 コンテ:三好一郎 演出:三好一郎 作画監督:角田有希

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5話と最後まで迷った。自分なりに三好一郎が初めてわかった!みたいな話。画を並べるだけで素敵さが伝わると思う。今まですごくよい話を作るのはわかっていたけども、その本質は志向はどこにあるのだろうかと自分の中で結論が出なかった。

今回はそれについて詳述しない。来年以降、言葉にできるんじゃないかなと考えている。

三好一郎で一度見たいのは作家性の強いクリエイター(アニメの文法から外れている人の方がいい)の下で演出として腕を振るうところ。それこそ川村元気が「こういうの作りたい!」って一見ムチャクチャな夢を語ったときに、三好さんがどんな映像を作るのか、それを見たい。「映像としての格が高い、リッチで調和した作品」とはまた違った世界が見てみたい。

5『レイトン ミステリー探偵社 〜カトリーのナゾトキファイル〜』15話「カトリーエイルとミステリーサークル」

脚本:森ハヤシ コンテ:横山和基 演出:横山和基 作画監督:鈴木絵万、柳田幸平、森悦史、清水博幸、はっとりますみ

プリキュアの裏番組という修羅の道を進む作品。しかもタイムラインではフルタ製菓ふるたんも敵に回る。

だがどのエピソードも楽しく観られるナイスシリーズだ。主演花澤香菜さんの魅力的でパワフルな演技もゆかいで、可愛らしい絵柄とあいまって安心して観られる作品だ。

TVシリーズでミステリは難しいなあといつも感じているが、謎を集めて考えるこのスタイルは難易度的にもちょうどよい気がする。子供が一生懸命頭で考えて(紙にまとめたりしなくても)ギリギリわかるというこの難易度が大事で秀逸だと思う。

さて花澤さんの演技が楽しい本作だがこの話数はその極北の一つ(極北いっぱいあるのだけど)。

推理を披露して犯人を明らかにするカトリーだが、相手もすぐには降参せずそれがどうしたと開き直る。ではどうするか?

答えは花澤力だ!とにかく花澤さんは敵役を迫力で追い詰めて遂に降伏させてしまう。

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これそもそも推理いるんか。 

推理力<花澤力が観られるのは『レイトン教授』だけ!

予定調和でありながら随所で品良く踏み外す面白さがある作品だ。

6『サザエさん』7735話「わたしの天職」

脚本:城山昇 コンテ:長友孝和 演出:岩澤秀平 作画監督:鈴木佐智子

日曜の朝に花澤香菜(カトリーエイル=レイトン)あれば日曜の夜に花沢さんあり。

ということでサザエさんだ。といっても今年は結構惰性で観ていて、あまり心に残るエピソードがなかった。雪室先生のジュブナイル的な叙情のある話数はいくつもあったが。雪室先生はホリカワの濫用が止まらず城山先生は相変わらず自分にはちょっとわかりにくい。たーひろ広田先生は何かかましそうでかまさない話がいくつかあり残念だ。今風のアイドル出すぐらいやってくれそうなので俺は信じてる。最優のサザエーエイゾー小林はそもそも登板数が少なかった。

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本作はごらんのとおり美しい作画が心に残ったので挙げた。

7『ヤマノススメ サードシーズン』10話「すれちがう季節」

脚本:ふでやすかずゆき コンテ:ちな 演出:ちな 作画監督:今岡律之

同じちなさんの2話と最後まで迷ったが、本作を推す。既に映像に情感が焼き付いていて、具体性のない言い方かも知れないが、映像としての格が高い。単に画が巧いとは隔絶した、美のある映像空間を作ることのできる人だ。ちなさんは間違いなく、未来の映画監督だ。それも飛びきりの。それまで元気でいたい。

 

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あと新米小僧さんが忘れがたいと言っていたシーンが私も忘れがたかったのでここに追加します。

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8『宇宙よりも遠い場所』12話「宇宙よりも遠い場所

脚本:花田十輝 コンテ:いしづかあつこ、清水健一 演出:北川朋哉 作画監督:川口裕子、日向正樹

新宿を駆け抜ける切なさと青春にあふれた2話と迷った。選んだ理由はやはり最後の報瀬のシーン。

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映画やドラマに類例があるのかもしれないがそれでも。無機的なはずの動作が、強く強く胸を打つ。この切なさは実に映画的というか、劇場でこんなシーンに巡り会えたらそれだけでその映画は100点つけたくなるような、素晴らしいアイディアだった。

9『僕のヒーローアカデミア』41話(三期3話)「洸汰くん」

脚本:黒田洋介 コンテ:松本理 演出:堂川セツム 作画監督:佐倉みなみ、柴田有香

日本語、いやことばというのは難しいもので「山田一」と「山田(一)」では意味するところが違う。前者はやまだはじめさんを指すのみなのに対して後者はやまだはじめだけでなく山田一郎とか山田一之輔とか山田一塁手かもしれない。まあどうでもいいけど。

 

さて映画版も素晴らしかった『ヒロアカ』から一本。松本(理)らしいアイディアに優れた可愛らしい画面作りが印象に残った。

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話は変わるが『Hugプリ』のエンドカードは見るたびにおっと思わせるものがある。表現の引き出しも多彩で、表現したい!という意志を感じさせる。

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東映ではこれを演出助手の人が作ってると聞いたけど、センスを感じさせて、これまたTVシリーズの魅力の一つだし、これもまた新しい才能に触れるチャンスでもある。

ともあれ力強い作品の中にこういう色合いの話数が少し混ざることはとても楽しい。

 

以下余談。今年はVTuberなども出てきたとき前から感じていたことがまた気になるようになった。

オタクの娯楽としてアニメの地位が下がってきているのかなということだ。

特に作るのも観るのも時間のかかるTVアニメは本数の高止まりもあって分散してしまい、段々と注目されない存在になってしまうのかなと感じてきている。もっと簡単に楽しい時間を作り出せたらアニメの需要は減るのだろうかと。それでも自分はアニメにアイラブユーって言えるのかなあと。それとも新しいものに飛びついてアニメを省みなくなるのかなと。

アニメの世界がすごく小さくなるとしても、そのときはそれを受け入れるだけではあるけど、たとえ話題にならなくても自分はアニメを好きでいると思うことの多かった一年でもあった。小さい頃から見てたアニメはもうずっと自分の中に存在していて切り離すことはできないし。

そんなこれまでもあったものが今もこれからもそばにいるそんなアニメがこれだ!

ベイビーアイラブユーなんだぜ?

youtu.be

※本項で動画を貼るための前置きが長かったことをお詫び致します。

10『ゲゲゲの鬼太郎』(第6シーズン)20話「妖花の記憶」

脚本:吉野弘幸 コンテ:三塚雅人 演出:三塚雅人 作画監督:信実節子

東映繋がりでラストは三塚雅人のこれ。

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東映アニメには子供番組で戦争を真正面から扱ったエピソードがいくつもあり、これもその系譜に連なるもので、『タイガーマスク』など思い起こされる。

画は見事に怪しく美しく恐ろしい。大人になった自分は一歩引いて冷静に見てしまう一面もあるけど、子供のときにこれを観て多分人生にずっと、心の中にずっと在り続ける、そんなエピソードが点在していてほしい。

 

今年も例によってTVアニメをたくさん観られたわけではなかった。上に挙げた以外にも面白く最後まで観た作品は多い。

ヒナまつり』『だがしかし2』『宇宙戦艦ティラミス』『ひそねとまそたん』『シュタインズ・ゲート ゼロ』『少女☆歌劇レヴュースタァライト』『新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION』『ラーメン大好き小泉さん』『りゅうおうのおしごと!』『プラネット・ウィズ』『ゆるキャン△』『恋は雨上がりのように』『SSSS.GRIDMAN』『からかい上手の高木さん』などなど。

ただどうしても、一つのシリーズとして見ていてその中から一本を抽出するのが難しかった。『ゆるキャン△』は特に厳しく世評の高い5話だけでなく到底選べなかったし見返す時間も取れなかった。

これは例年のことだけど、もっと鋭敏な感覚を持ちたいなと思う。映画だと集中力続くけど、少しぼんやりと話数を消化してるのかもしれない。

10選企画もやってみて始めて面白さというか、他の人のものを読む楽しさがわかった。「あ、これの価値を見過ごしていた」という発見があるだけで充分楽しい。