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「箸の芝居が全員違うのは何故?」「アニメスタイルイベント ここまで調べた『この世界の片隅に』 その調査・考証の全て!?」

前置きと経緯

この記事の続きです。

 

注意(再掲)

※これは音声おこしではありません。現地での質問・回答をわかりやすく自分なりに噛み砕いたもので、文責はすべて私にあります。また公式関係者より削除の指示があった場合は速やかに対応致します。

 

 二問目(ニコ生02:48:00くらいから)キャラクターデザイン・作画監督松原秀典さんへの質問

 

楠公飯を食べるシーンでは円太郎さん、サンさん、周作さん、すずさんの四人ともが、茶碗を持ち箸を構える所作が違います。原作にはない芝居です。他の場面にも、そういう部分がたくさんあります。

どのようなお考えで作画されたのでしょうか。

 

 

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 (2016年10月19日NHKニュースおはよう日本 特集より引用 

まず女性と男性で所作が違う。

すずさんは先に箸を持ってから茶碗を持とうとしている。サンさんは基本的にはすずさんと同じ所作である。女性二人は箸を持ち上げ、食べる型に持ち替えてから左手で茶碗を持つ流れである。

円太郎さんは既に左手で茶碗を持ち上げており、箸は右手で上からかぶせるようにして掴もうとしている。周作さんは先に左手で茶碗を持ち上げているのは円太郎さんと同じだが、箸を横から拾って持とうとしている。なお円太郎さんはこの後、「左手で茶碗を持ったまま」箸を持ち替えるのだが、何とも言えないよい芝居が見られる。)

 

 

(質問の補足)

雑誌アニメージュ2016年12月号 「この人に話を聞きたい」では

小黒「作監として芝居を足すとか、そういう仕事ではなかったんですね」

松原「ないですね。(後略)」

 

 

というやりとりがあります。これは上がってきた原画に対して動きを補ったりするいわゆる作監の仕事とは違うという意味だと思います。では松原さんの仕事とはどんなものなのか?

 

そして、2016年11月25日の大正大学における特別講義では、来場者からの質問に対して片渕監督が「左手で茶碗を持ったら、ワンアクションでは右手で箸を構えることができない。そこに問題意識を持つのが松原さんという方なんです」(大意)とお話しになっていました。

 

それを踏まえまして、こういった原作にない所作を足されていることについて、どのようなコンセプト、お考えがあったのかお聞かせ願えないでしょうかという質問です。*1

 

 

 

 

松原さんより

A原作を読んだ時点で「遠くまでいく作品」だと思った。後年まで、また海外の方にも広く観られる作品だと思っので、何が正しいかという意味の「狭義の考証」は二の次だと思った。

ランドマーク、象徴になるシーンが必要で、そのひとつが楠公飯のシーンだった。ワンカットに箸を持ち、いただきますを言って、楠公飯を食べる所作が全て入っている。それをきちんとやってしまえば、その他はある程度省略してもいいと思った。それをやらせてほしいと言ってやらせてもらった。

 

草津のおばあちゃん(森田イト)の箸のくだりも含めて、姿勢や作法には人となりが出てしまうので適当にできない。適当でぞんざいな芝居をしているとすれば、それはその人がそういう人物だということ。

 

その他の反応まとめ

監督より山口明子さん作画の草津ですずさんに着物を着せるシーンが挙げられ、栩野さんもその芝居がお母様を思い出すと語られていました。

松原さんが自分で芝居を実践する話をされると、栩野さんがお父様の外套を監督に今貸してくれと言われて、貸した話を返しました。

その外套を松原さんがかっこいいと言う話。

松原さんから勉強した上で適当に描くことの大事さ、新谷さんから楠公飯のぷるぷる感についてのお話、松原さんがマンガの動作を自分でやってみて動画に撮っていたが、すずさんが鷺を追いかける芝居のところでは「おっさんではだめだ」と思った話(笑)、などなど色んな話がうかがえました。

 

私の感想

質問してよかった。話が転がってよかった。松原さんが話すパートがあんまりなかったので、いいバランスになったのではないかと思います。

ありがたいことに好評で、会場もコメントも感心されたり湧いていたりと、質問がよい結果に結びついて本当によかったと、ほっとしました。

結構たどたどしく質問しましたが松原さんが明快に答えてくださったのです。松原さんが心を込めた部分を、私が感じ取ることができて、そのアニメーターの背骨を、質問としてうかがえていたとしたら、そしてそれをお客さんに届けて共有することができていたら、とても充分な事です。

 

おしまい。

 

*1:ニコ生を観て頂けるとわかりますが、この記事の質問はものすごくものすごく補足をしています。誰がやったか、というシンプルな質問にとどまらず、監督が詳細な考証をする一方で、マンガのコマの前後の芝居を描く、というこの映画をより一層豊かにしている仕事が、誰のどのような思いによってなされたのか、ということを私は知りたくてしょうがなかったのです。