浜村淳『この世界の片隅に』を語る~

毎日放送のラジオ番組「ありがとう浜村淳です」11月30日回の『この世界の片隅に』部分を文字おこししました。

※映画本編の内容にドカン、ドカン、ドカン! 触れています。未見の方はご注意ください。

ありがとう浜村淳です (11/30) - YouTube

 

 

浜村 昨日メッセージをいただきましてね。

「浜村さん、『この世界の片隅に』をまだ紹介してない。早よ紹介せえ、やれ! 今日せえ明日せえ明後日はやれ!」とそういうお便りをいただきました。
鳥居 ああ。そうですか。


浜村 毎日放送のお隣、ロフトの地下でね、上映中なんです。うちの番組の藤井ディレクターが3回も4回も行ったんですって。
鳥居 え、ほんとに。
浜村 ほんとに。行くたんびに満席で、入れなかったんやそうです。
鳥居 今ねえ、SNSで、すごい盛り上がってるというのかな、すごい話題になってるんですよ、今。
浜村 藤井ディレクターはあの背の高い体をね、七つ八つに折って「是非入れてくれ」言うたそうですが…。
鳥居 ああ、七つ八つに折っても、大きいからねえ。ちょっと無理やねえ。
浜村 今向こうで居ってますけどね、居っても大きい。「あんたみたいに大きい人はねえ、満員の映画館にはちょっと無理です」と言われて行ってないんです。わたくしは見てるんですけどもね、これ実は鳥居さん。
鳥居 はい。

 

浜村 こうの史代さんという方がお描きになった……、アニメなんですねえ。それをね、片渕須直さんという監督。脚本も監督も兼ねまして、何としてでも映画にしたいと。…お金がないんです。
鳥居 ええ。
浜村 つまり大手の映画会社が乗ってくれないと。そこで一般の皆さんに資金を、制作費を募集したんです。そしたら三千万円以上集まったそうです。これでねえ、映画できた。ひじょうに、よい出来です。ただ宣伝する余分のお金がない。
鳥居 そうですねえ。

 

浜村 だからテレビのコマーシャル、出たかな? 一遍も出てないんじゃないですか。これね、ここにすずさんという十八歳の少女が居りましてね、画がものすご綺麗です。リアルです。

すずさんね、十八歳でね、自分がまだ気持ちも決められないうちに昭和十九年の二月、広島県呉にお嫁に行ったんですよ。相手は日本の海軍の軍人の一人でね、呉の港が戦艦大和を建設中だったそうです。見知らぬ土地でね、北條という男性、親も小姑もみんな一緒の暮らしです。

そこですずちゃんはね、懸命に懸命に尽くしましてね。洗濯、炊事、お掃除。まずね、近くの共同井戸へ行って、いっぱい水汲んで。朝早いですよ、四時五時からね、それから一日が始まるんです。ずいぶんね、嫁ぎ先のために尽くしました。

そしたらね、夫の姉が、よそにお嫁に行ったその姉が義理の姉ですね、小姑ですね。小さなこどもを連れて出戻りしてくる。よけい嫁としてはやりにくいじゃないですか。

鳥居 うん、うん。
浜村 それでもね、食料のないころは一生懸命工夫して工夫してね、ええ嫁さんですよ。またすずちゃんの声をね、のんってわかりますか。
鳥居 はい。

 

浜村 能年玲奈をね、監督が「あまちゃん」観ていて声に惚れ込みましてね。ぜひこのすずちゃんの声やってくれ言うて引っ張り出したんですよ。で、主人公のすずちゃんはある日ふと道に迷ってね、遊郭に迷いこんで遊女の若い女の子の辛い境遇を知ったりね。

また軍艦に乗ってる水兵さんに出会う。その水兵さんが小学校の同級生なんですね。太平洋戦争の真っ最中の、あの怖い怖い、絶えずアメリカの飛行機が飛んできて爆弾落としますね。物がない時代です。すずちゃんが工夫して家族のために色んな食料を工夫して、みんなが喜んで食べられるようにしたり。着るもんもないから、古ぅくなった着物や洋服を直したりね。よい嫁ですよ。

 

こんなすずちゃんが、昭和二十年三月。広島県呉はね、空が見えないほどアメリカの飛行機が飛んできてる。ドカン、ドカン、ドカン。爆弾を落としますね。命がけですよ。それでもなんとか生き延びた。そして最終、ラストシーンに迎えるのが、むっちゃん。昭和二十年八月六日、広島に原爆が落とされた日です。これによってすずちゃんの運命はどうなったか。これはもうロフトの地下にある映画館が何回行っても満員になるほど、感動の作品になってますね。
鳥居 ええ。そうですか。
浜村 『この世界の片隅に』。まず画が実にリアルでうつくしい。そこへすずちゃんの姿が、いじらしいほどかわいらしいほどよくできた、若い嫁ですよね。十八歳、十九歳の嫁やります。で、観てね、感動の涙が止まらないくらいです。いつまでやってるのか、そこまで確かめておりませんが。
鳥居 また後で調べてみましょう。
浜村 そうですね。毎日放送のお隣、ロフトの地下でやっておりますんで、ご覧ください。また戦争というものにね、改めて考えさせられます。

 

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続編もあるのです。

an-shida.hatenablog.com

ムービーウォッチメン『この世界の片隅に』全文

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル内の名物コーナー

ムービーウォッチメンで「この世界の片隅に」が取り上げられました。

 (水曜日頃には公式におこし文が出ると思います)

 ※注釈のカット番号はコンテ集によっています。またわかりやすいように文章を調整しています。

 

この世界の片隅に

マンガ家こうの史代の同名コミックを『マイマイ新子と千年の魔法』などで知られる片渕須直監督がアニメ映画化。第二次世界大戦下の広島呉に嫁いできた18歳の女性すずが慎ましく逞しく懸命に暮らす姿を描く。ヒロインすずの声を演じるのは能年玲奈から改名したのんさんということでございます。

 

公開して以降、この番組にもやれやれというメールをいっぱい頂いておりまして、評判も非常に高く劇場もいっぱいだということを聞いておりまして。ようやく古川耕さんが「1万円なら安いもの」という名言を残してですね、偶然にクラウドファンディングを引いてしまったわけですが、当てさせて頂きました。

 

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虚報タイムスのピアノ記事が見事だった。

twitterで回ってきたこの記事があまりに素晴らしかったので少し書いてみたい。

ジョン・ケージ4分33秒という全く音の出ない曲(と言えるかどうか)が演奏されなかったという記事。

要するに観客が「4分33秒」を知らず、音が出ていない時間があった=演奏していた、ことに気づかないで怒るという、ジョーク記事だ。

だが、この記事は実に周到だった。

解説を入れてみたい。

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決定!2016年my「このネタバレにやられた!」

映画『レッド・タートル ある島の物語』『サマーウォーズ』の内容に触れている箇所があります。

未見の方はご注意ください。

 

 

この記事は、個人的に今年いちばん「やられた!」というネタバレツイートを決めるものですが、前置きがとても長いです。すみません。

1.ネタバレとSNS

SNSをやっているとネタバレに遭遇することがあります。

注目されたくて秘密を叫んでしまうものや、意図せずにネタバレをしてしまうものもあります。

小説好き、映画好き、物語好きといった人たちがネタバレについてのエチケットやモラル、あるいはどこからがネタバレかどこまでがネタバレか、という議論をするのも幼い頃からよく見てきました。

 

中には、過激な「タイトル以外は全部ネタバレである」と言う人も。

  

ネタバレ考慮しない人のツイートや投稿は避ければいいという意見もありますが、よっぽどクローズドな環境にいない限り、難しいです。

 

 

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私の「この世界の片隅に」の歩み~2015年

1.前回までのあらすじ

 

この世界の片隅に』映画企画も少しずつ進んでいるらしい。いるらしいがファンの自分には動きがよくわからない。でもひたすら待とう、と思って2015年がやってきた。

 

 

2015年3月

アニメスタイルイベント ここまで調べた~」もついに最終回。

自分は仕事の為行けず。

 

animestyle.jp

レポートはこちら。

http://www.mappa.co.jp/column/scrapbook/column_scrapbook_03.html

 

ここでクラウドファンディングが発表になる。

メディアで取り上げられるとき大体毎回語られているので詳細は省くが、広くファンに支援を募るこのシステムが、大成功した。

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ラジオ music is music この世界の片隅に特集

music is music 11/6(日) ラジオおこし

www.interfm.co.jp

 

(牧村) 音楽プロデューサー牧村憲一です。
(Aimee) Aimee Isobeです。
(牧村) 40回目のmusic is music。今日は特別編で11月12日に公開のアニメーション映画『この世界の片隅に』を特集します。
(Aimee) この世界の片隅にの主人公はすずさん。日本が戦争の中にあった頃、軍港の街広島の呉にお嫁にやってきた18歳のすずさんは見知らぬ土地で健気に毎日の生活を紡ぎます。映画では戦火にさらされ大切なものを失っても前向きな生活を続けるすずさんの日々を描きます。

 

(マスヤマ) 私とエンジニアの美島さんはmishmash*という音楽ユニットやってましてAimeeさんは今のフィーチャリングヴォーカル。そのミュージックビデオをこの映画の監督の片渕さんに作っていただいたことがあります。そしてそのご縁でこの映画も応援することになって、今では製作委員会のメンバーでもあります。先日Aimeeさんにも試写を見に行ってもらったんですが、率直に換装お伺いしたいですね。
(Aimee) あのですね、私はあんまり情報がなく行ったんです。もちろん予告編は見させていただきましたし。片渕さんの作品だということだけ、後は戦争ものということだけ。わたし達、家族に戦争体験した人がいない世代っていうのは、なかなか戦争時にどんな感じだったって考えたことも無いですし。戦争の映画とかは観ますよ。でもなんとなく戦争=悲しい、またはおきてはいけないこととしか捉えていなくて。この映画はですね、あまりにも普通の生活に戦争が起きてしまったっていう、本当に戦争が後からちょっと足されるぐらいな感じだったんですね。だからこそ普通の人たちが、私たちと同じ様なことをしている普通の人たちが、本当に頑張っているのに戦争が起こってしまうということが痛くて辛くて。悲しいっていうより本当に戦争に対しての意識ががらっと変わる作品でした。
(マスヤマ) 主人公のすずさんを演じるのは声優として初主演の女優のんさんです。今回は私が監督とのんさんにお話を伺ってきました。インタビューをお送りします。

 

(マスヤマ) Music is music今日は特別編としてこの世界の片隅にの監督の片渕さんとのんさんをお迎えしております。よろしくお願いします。
(のん) よろしくお願いします。
(片渕) よろしくおねがいします。

 

このインタビューの前日のんさんはこの映画のアニメ制作をした株式会社MAPPAのスタジオに見学に行っていたそうです。

 

(マスヤマ) まず記憶に新しいところで昨日の話から教えていただけますか。
(のん) あ…。はい。
(マスヤマ) MAPPAに行かれたんですよね。いかがでしたか。
(のん) すっごい面白かったです。『この世界の片隅に』がどうやって作られてるかっていうのを見せてくださって。
(マスヤマ) アニメのスタジオとかを見たのは初めてなんですか。
(のん) 初めてです。すごい緊張しました。資料とか。
(マスヤマ) 一部屋全部資料室になってますもね。
(のん) そうですね。積み上がってますね。これをお邪魔していいのかな、怖がりながらお邪魔しますっていうか。
(マスヤマ) インスタ見ましたけどものんさんの描いたキャラクターがアニメに。ワルイちゃんでしたっけ。
(のん) ワルイちゃん、動かしてくださって。
(マスヤマ) なかなかないですよねそういうことね。
(のん) そうですね。めっちゃくちゃ嬉しかったです。
(片渕) あれ動かしたアニメーターの北澤くんていうのがさっき「もうこないんでしょうか」と「のんロス状態」に(笑)。
(マスヤマ) 早(笑)。
(片渕) 「もうこないんでしょうか」としみじみすごい寂しそうにしてたね。
(のん) ああよかったです。なんかすごいお邪魔になったんじゃないかと思って。
(片渕) いやいや。もうちょっとしたらこっちもも少し時間が取れるんでちゃんと色を塗ってweb上とかで出せるようにちゃんとしたほうがいいかなと思って。
(マスヤマ) キャラクタービジネスを。
(片渕) うちの作画監督松原秀典さんも、ちょっと驚いてたんですけれど。あれのんさんが描いたアニメーションも本当に理屈が通っている。こういうふうに動かせば動いて見えるよっていう理に適った動きになっていて最初から4枚絵を描いてちゃんと動かしてるってすごいなって褒めてた。
(のん) 本当ですか。なんかカツラがぴょんと飛んで。
(片渕) でも飛ぶためには本人がジャンプしなければいけない。それが地面に起こったときにどんな風に体が縮んでとかすごいりりかなってた。
(のん) いや監督に褒めてもらえて。
(マスヤマ) 片渕さんに褒めらられたらホントですよね。
(片渕) 松原さんはこれ片渕さんか浦谷さんが手を入れたんですかって。いや入れてない入れないって言って
(のん) 嬉しい…。

 

映画この世界の片隅にの原作はこうの史代さんによる漫画です。のんさんに原作を初めて読んだ時の印象を伺いました。

 

(のん) あのすごく……、衝撃的でしたね。戦争というものに怖くてあまり目を向けてこなかったんですけど。初めて当時はこういう感じだったのかなっていうのに触れて、戦争がある中でも日々の暮らしっていうのを、絶対毎日していかなきゃいけなくてその生活が大切に描かれているのが感動しました。
(マスヤマ) なかなかありそうでないですもんね。衝撃的なシーンが描かれるようなことが多いので、なんかご飯の作り方がゆっくりでてくるとかそういうのはないですもんね。
(のん) 楽しかった、です。ご飯を作るシーンとかすずさんが一生懸命なんだけれどちょっとそれを楽しんでる風に見えてそれがすごく好きでした。

のんさんは原作を読んですぐにすずさんは自分で演じたいと強く思ったそうです。

(のん) はい。作品を読ませていただいた時に「私がやる」って勝手な思い入れを作ってきてしまってそれでやりたいですって勢いが。
(マスヤマ) 監督にチラッと伺ったのが今声優さん初めてですよね。
(片渕) 2回目なんですよね。主演は初めてです。
(マスヤマ) 結構声の出し方とかが最初苦労したって伺いましたけど。
(のん) そうですね。勝手に映像のイメージでこういう感じかなって思いすぎてたところもあったんですけれど、ちゃんと声優ってことをわかってなくて。リハーサルに臨んだんですけど全然ダメでした。
(片渕) 今までは画面の前に立ってたらそれでキャラクター表現になるじゃないですか、彼女は。でも何か言わないといけないんですよね。でも台本に書いてることだけ言っててもすずさんにならなくて。もう画面はできているけどすずさんがここで何回びっくりするかで「えっ、あっ、おっ」って全部言っていくことで、初めてすずさんになるんだとしたら、誰も書いてないところまで、全部映像の中のすずさんをいっぺん観察してきてもらわないといけないということだよね。
(マスヤマ) 監督、最初にテストを聞いたときはどんな印象でした。
(片渕) うーん、最初?(笑) 率直に言うと……。
(のん) めちゃめちゃ困ってる気がする。降ろされるって思って私。
(マスヤマ) ハハハハ。
(片渕) なんだっけな、普通に芝居してる時と違ってすごく強張ってるみたいな感じがあって。画面で自分が映ってて芝居をしてる時みたいなところまでペースを持っていてもらえばいいかなと思って。最初すごい緊張してマイクの前に立っているのがわかったので。
(のん) すごい、てもガチガチでした。
(片渕) そうそう。いちばん最初からだほぐしましょうって言って。なんだっけ北三陸っていうのから始めて。
(マスヤマ) (笑)。
(片渕) 「岩手県三陸市からやってきた海女のアキちゃんです」っていうのを言いながら体を動かしてというところから始めて。体動かしてほぐして、でも体を動かすとマイクから外れちゃうからダメって言われて(笑)。
(のん) そうなんですよねそれが。本当に1回目は降ろされるんじゃないかなとすごい怯えてて。
(片渕) あの時方言指導で俳優の栩野幸知さんていう人が最初に入ってたんですよ。栩野さんもあまちゃんファンなんですよ。
(のん) …おおぅ。
(片渕) 「あまちゃん」は欠かさず観てたのに今ブースの中一緒にいる人が「あまちゃん」やってたのんちゃんだって最後まで気づかなかったって言ってて。それぐらい最初強張ってたなと思う。でもそれがね、どんどんどんどんリラックスしてくるに従って、すずさんてふわふわっとして、ぼーっとしてる感じじゃないですか。そこまでたどり着いた時にやっぱりお願いしてよかったっていうか、ものすごく考えた通りのすずさんだったっていうね。
(のん) 監督にすごいいっぱい質問させていただいたんですけども。ぼーっとしてほやほやっとしてるけど気が強いんじゃないかなって思った時に、自分の中でフィットしたっていう感じがします。
(マスヤマ) 先日の初めての試写で、全体を見たのが初めてですよね。
(のん) はい。
(マスヤマ) いかがでしたかご自身では。僕なんかすごく率直に最初はのんさんの声なんだって、でも本当に最初の数分だけで、後はすーっとストーリーに入っていったのですごくブレンドしてたなっていう。この間監督にもお話ししたんですけども。
(片渕) そうそう。観てても顔が浮かんでこないんですよね。すずさんが普通に喋ってるみたいに聞こえる感じがする。
ああ、そう言っていただけると。
(マスヤマ) ご本人はいかがでした。
(のん) 私左隣にこうの史代さんがいて、そのまた向こうに監督が座ってらっしゃって。その横で観てて、最初からめっちゃ怖いって思いながら見てて。そしたら冷静でいられなかったのか、ここ大丈夫だったかなと思ったり、こうのさんが手を動かすだけでビクッてなったり。
(片渕) こうのさんハンカチを出して泣いたり笑ったりされてたんですよね。
(のん) そうなんですね。こうやって横を向いて確認するのもできないって思って。
(マスヤマ) 映画館ですからね。
(のん) 横の動いてる気配はわかっても、どう思ってるんだろうって。冷静になってからもう一回見たいって思いました。でもやっぱり映像がすごく、セリフがなくても涙が出てくるくらいすごいと思ったので自分の声が大丈夫かなと気になりましたが。

 

Music is music今日は特別編として『この世界の片隅に』片渕監督、主演の女優のんさんにお話を伺っています。ここで映画の主題歌をお送りします。コトリンゴで「悲しくてやりきれない」

 

(マスヤマ) その番組は音楽メインの番組「music is music」というなので音楽の話も伺いたいんですけど。この映画のテーマ曲。「悲しくてやりきれない」は、のんさんはもともとご存知でしたか。
(のん) 私今回の予告編で知りました。
(マスヤマ) どんな印象でした。
(のん) コトリンゴさんの声で聴いたのが初めてだったんですが、フレーズがもう悲しくてやりきれないというか。ずんって突き刺さるような、けどコトリンゴさんの声と音楽が、すごく映像の中の風景が直接心の中に流れ込んでくるような感じがしてそれがすごく。
(マスヤマ) この映画の話から離れてもいいんですけど、のんさんは普段はどういう音楽を聴いてらっしゃるんですか。昔の記事ですけどもwebなんかを見るとフレネシさんが好きとか。
(のん) フレネシさん、好きです。ライブに行ったりしてました。
(マスヤマ) あとは神聖かまってちゃんとか、そういうのが好きですか。
(のん) 最近は明るいポップなロックの方が好きになってきて。シンディ・ローパーとか、女の子が突き進むぞって感じの音楽が好きですね。
(マスヤマ) 今ギターはまだ弾いたりしてるんですか。
(のん) 弾いてます。今曲を作ってます。
(マスヤマ) すごい。それ聞きたいですね。
(のん) 素人ですが。どうやって作るんですか。
(片渕) 訊かれちゃった。
(マスヤマ) 人によって違いますけど僕の場合はギター弾きながら鼻歌的に作るし、僕が一緒にやってる人は結構理屈で作るし。人によりますよね。
(のん) なるほど。

 

ここで映画とは別にのんさんご自身が好きな楽曲を選んでもらいました。

(のん)ユニコーンさんで「WAO」。

 

(マスヤマ) music is music今日は特別編として『この世界の片隅に』を特集していますが、片渕監督はこの映画の構想を持たれたのは2010年。なんと6年前なんですね。その頃からずっと制作を続けられていて、今ようやく制作が終わってほっとされているのか、ものの作り手、クリエーターとしてまた何か作りたいと思っているのかその辺を伺ってみました。

(片渕) 前にこの世界の片隅にの制作日記的な連載コラムをwebでやってて「1300日の記録」ってつけてたんですよ。それは『この世界の片隅に』やりましょうって提案した時から数えてたんですけど1300日で全然終わらなくてさっき数えたら2300日で公開まで行くという感じで。
(マスヤマ) (笑)。
(片渕) 2200日過ぎてからのんちゃんが現れたりとかしてるんですよね。最後のほうは全然他のこと考えられないし、取材とか映画のポスターだって全然考えられなくて、ひたすら仕事場来て夜中まで居て帰ってすぐ寝るみたいな。
(マスヤマ) 季節感が無くなってたっておっしゃってましたよね。
(片渕) だから今年夏服出してないんですよ。
(マスヤマ) これは初めて聞きました。
(片渕) だからこれはアマゾンで買った。だから去年の大掃除してないの。
(のん) そうなんですね。
(片渕) うちは夫婦で監督と監督補なのでどうしようもなくて。家に犬と猫がいるんですけれど家が野生状態になってて人がいないで犬猫だけがソファー分解してたりしてて大変だった。
(マスヤマ) 犬猫うれしかったかもしれないですけどね(笑)。
(のん) 解放され。
(片渕) 解放されて(笑)。

 

この世界の片隅に』エンディング曲をお聴きください。コトリンゴ「たんぽぽ」。

 

映画『この世界の片隅に』主演女優のんさんと監督片渕さんに一言お願いしました。

 

(のん) 『この世界の片隅に』11月12日…、公開ですね。普通の生活というものが素晴らしいと感動する映画だと思いますので皆さん是非見てください。
(片渕) 『この世界の片隅に』は戦争中の映画なんですけどね、多分そんな意識でなくて見てもらえるとよい映画になってるんじゃないかなと思いますよね。なんか普通にいる人が普通にいるだけっていうところから始まって、自分たちもこんな子供時代過ごしたなっていう、でもちょっと昔風の風景だなっていうだけで。それがその普通がどんどん大変なことになっていたりするんだけど、それも僕らがちょっとこの前に震災とかで味わったようなことと、そういうのとお話が重なって見えたりするところとかあるんですよね。
昔のことだとか戦争のことだとか思わないで観てもらって大丈夫な映画になってると思うんですけども。ただそれはそれなりに押し寄せてくるものは凄まじいと思います。戦争というものがこんな風に頭の上に来ちゃうのかっていうのは自分でも作ってて怖くなっちゃって、という感じがありますよね。
(マスヤマ) うん、うん。ありますよね。
(片渕) 今まで戦争、戦時中ってこんな風だったっていうイメージとはちょっと違う風にして捉えてみていただくことができるんじゃないかなと思ってます。
(マスヤマ) わかりました。今日はじゃあのんさん、片渕さん、ありがとうざいました。
(のん) ありがとうございました。
(片渕) ありがとうございました。


(牧村) 今日のインタビュー聞いててどうでした?
(Aimee) 監督と私も一度お仕事してもらったことあるんですけど、すごく熱が……、あったかいものを込めてこの映画を作ったんだなって思いますし、のんさんの貴重な感想が聞けてとても楽しかったです。
(牧村)はい。今日は映画『この世界の片隅に』の特集でした。牧村健一でした。
(Aimee) Aimee Isobeでした。

 

 

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2016年11月4日NHKジャーナル 『この世界の片隅に』音声おこし 

NHKラジオ第一 2016年11月4日 NHKジャーナル 『この世界の片隅に』音声おこし  

公式音声置き場

NHK

永井克則 奥村奈津美 福田寛之 岩本裕

ゲスト

片渕須直監督

冒頭

(片渕) 『この世界の片隅に』の監督の片渕です。この映画を作るのに6年かかりました。

 

 


本編 NHKの方の男性発話者は複数いらっしゃいますが、全て「男性」で統一してあります。

 

 

(男性) 監督の片渕須直さんにお越し頂きました。片渕監督よろしくお願い致します
(片渕) よろしくお願いいたします。
(奥村) 『この世界の片隅に』は戦時中、軍港の町、広島県の呉にお嫁にやってきた18歳のすずさんが、見知らぬ土地で毎日の生活を紡いでゆく姿を丹念に描いたアニメーション映画です。主人公のすずさんを女優の「のん」さん23歳が演じています。のんさんはアニメ映画初主演です。
(男性) 戦争で物資がなくなって世の中が不穏になる中で、楽しみながら日々を送ろうとする普通の人たちの生活。のんびり屋で微笑みを絶やさないすずさんがとっても愛らしいんですけれども、まずは監督。なぜのんさんを主演に据えようと思ったんですか。
(片渕) そうなんですね。すずさんというのはすごく微笑ましい人ですね。家事なんかも得意っていうよりは自己流で何とかしてしまって。失敗するのかなって思ったらなんとかなってしまう。でもそういう面白い芝居、演技をですね、のんちゃんは若い女優さんなんですけど、自分の仕事を人に笑っていただけるような芝居をすることなんだって、はっきり思ってるそういう人なんですね。
(男性) 失敗のところもくすって笑いながら逆に勇気づけられるようなそういう印象になってますね。
(片渕) そうですね。
(奥村) 初めて会った時の印象は
(片渕) すごくニコニコしていて。すずさんという人もいつもニコニコしているんですけどね。すずさん以上にニコニコしてて。
(男性) のんさんにも実は話を聞いてきたんです。

 

のんさんインタビュー

(男性) 本当に今回の映画非常に素晴らしいなぁと思ったんですけども、主人公非常にのんびり屋さんじゃないですか。あの感じ、すごく合ってたと思うんですけども、自分では出来はどうだったと思いますか。
(のん) あ! 出来ですか。あぁ出来か、難しいな……。自分では見れば見るほど、どうできたかなって考えてしまうんですけど。自分ができるすずさんは尽くせたかなとは、思います。
(男性) 広島弁ってすごく難しくないですか?
(のん) 難しかったですね。方言CDを頂いたので、その、音声を聞きながら台本を繰り返し読んだりとか、後は映像をいただいて、映像の口に合わせるように練習をしながら、方言もあわせてやって。後は日常的にも使うようにしてました。
(男性) 広島弁を?
(のん) 広島弁を。
(男性) 日常で使うところありますか?(笑)
(のん) (笑)。難しいんですけれど演技だけでやるにはちょっと難しすぎて、普段から使うようにして自分に馴染ませていこうと思って。
(男性) あぁ。前は岩手県、東北弁で今度は広島弁ということで、方言は得意ですか。
(のん) 好きです。
(男性) 好き。
(のん) やっぱり音が広島弁だと、「ありがとう」とかいっこ飛び抜けてるとかイントネーションの違いが面白いなと思います。
(男性) 幼少期からすごく長い期間を演じなければならかったと思うんですけども、このあたりはどうでしたか。
(のん) そこがすごいあの、子供の頃もっていうのは緊張しましたね。どういう風にやればいいんだろうっていうのはすごく悩んだんですけども。監督がおっしゃってたのは、子供っぽく喋ろうということではなくて、その時のすずさんが一生懸命生きているのを表現して欲しいですというのを言っていただいて。子供の時のすずさんにリアルなものを持たせるためにはどういう解釈をするかっていう方が重要なんだなと思いながらやらせていただきました。

 

 

 

(男性) 実はこの時のんさんに伺ったんですけどもね。監督は、すずさんの子供の頃はのんさんがやるかどうか決めてなかったとおっしゃってたんですけども、最後の最後まで決めなかったんですか。
(片渕) すずさんという人は映画の中では8歳位の子供の頃から18歳でお嫁に行ってそれから20歳を過ぎてっていうところまでずっとあってね。20歳を過ぎる頃になると、戦争でずいぶん大人にならなきゃいけないわけなんですよ。いろんなことをのんちゃんにやってもらおうと思ってたんですけども、ただ子供の頃の声ってなると、のんちゃんは大人の人ですからちょっと低音の周波数が混じってくるって録音技師の人が言いまして。要するに声の質感が子供の質感とちょっと違ってしまうというところがあるんですね。とは言え主人公の子供って、子供の声とかよりも自意識みたいなことがすごく大事で。
(男性) 自意識ですか。
(片渕) 子供は自分のこと子供だって思ってないですよね。すごく大人っぽくしゃべってもいいんじゃないかなっていう気持ちが自分の中にあって。それと同時にのんちゃんが子供の頃のすずさんの演技をものすごくのびのびとやってるんですよ。
(奥村) ええ。
(男性) ああ、そうですよね。
(片渕) これはもう絶対に惜しいなと思って、周波数云々というのを捨てさせていただいて、最終的にのんちゃんの声で全部通すことにしました。
(男性) 最初拝見したとき私全然前知識なしに見て、すごく子供の声がいい声だなと思ってたらのんさんだったっていうのがあって。本当に合ってましたよね。
(奥村) 最初から引き込まれました。
(片渕) そう言っていただけるとありがたいです。
(男性) この映画なんですけど、監督制作期間がOPでもおっしゃってたように6年。クラウドファンディング、インターネットなどで資金を集めるという方法をとられたということなんですけども、どれだけの強い思いで作られたんですか。
(片渕) アニメーションって比較的まだ若い人向けだと思うんですよね。主人公は高校生ぐらいの年齢の人が多くて。僕はもう50代半ばなんですけども僕は物心ついた頃からアニメーションがあったんですよ。アニメーションを見る人も僕と同じようにすごく年齢が拡大していると思っているんですね。ですからもっと普遍的にいろんな方に語りかけるアニメーションが出てきてもいいんじゃないかなと思ってたんですけども。でもアニメーションって若い人向けなんだなって考え方が根強くがあって。それに対して、これだけのお客さんが味方についてくれてるんだよっていうのを示すためにやったのが今回のクラウドファンディングだったんですね。
(男性) ディズニーも含めてだいぶ年齢層も広がってきてるような気がしますけどね、やっぱりまだ限界を感じますか。
(片渕) そうですね。でもそこはこの作品を通じて突破していければいいかなと思ってますね。
(男性) 手応えみたいなものはお感じになったんですか。
(片渕) ものすごく短期間に多くの方が集まってくださって、僕だけじゃなくて制作に関わろうとしている人達みんなへの説得力になったと思います。
(男性) そして映画自体なんですけれども、ひとつひとつのシーンの風景とか昆虫もよく出てきて。それがひとつひとつもしかしたらこういう意味があるんじゃないかと思えるような登場の仕方をするようなところで。それから戦闘機とか爆撃機、軍艦も非常にリアルに描かれていて。高射砲の砲弾がちょっと低いところで爆発する様子なんかも、綺麗に描かれていて、すごく演出が丹念だなと思ったんですけども。
(片渕) はい。
(男性) 時間をかけられましたか。
(片渕) 時間はアニメーションをやってたらいつでもかかってしまうんですけども、どう描けるかなっていうところだったと思うんです。僕はアニメーションって夢見るようなファンタジーだけじゃなく、日常の暮らしの細かなところを描くと魅力を発揮する、日常の暮らしの、ご飯作るとかそういう事が輝くって思ってるんですね。それと同時にすずさんが生活している背景には戦争っていう要素がありますから。戦争がご飯を炊くのと同じ次元でもって、同じようなクオリティで描けていけたらいいかなと思ったんですね。そうしたときにすずさんが毎日やってる日常の生活と同じような意味合いでもって、戦争が同時に存在しているのだということが語れるような気がしたんですね。
(男性) 戦艦大和が入ってきた時の天気というのも全部調べられたと伺ってますけど。
(片渕) そう。だから自分だけの想像で作った世界じゃなくてね、その当時のものをできるだけドキュメンタリーのように切り抜いて持ってくるみたいな風にしようかなと。自分たちのほうがそっちへ入り込んでしまうみたいな感じですね。そんなような画面にしたかったんですね。
(男性) 以前番組にご出演いただいた山田洋次監督も細かなところにきちんとこだわって描くことで映画が生き生きとしてくるとおっしゃってましたけども、本当にそうなんですね。片渕監督、とても誠実そうな風に見えるんですけれどもどんな方なのかのんさんにも聞いてきました。

 

 

 

(男性) 監督はどんな方なんですか。
(のん) すごくあの、なんだ、ロマンチスト!
(男性) ロマンチスト。
(のん) ロマンチストな方で。
(男性) へぇー。
(のん) この間東京国際映画祭の舞台挨拶の時に「タイムマシンに乗ってすずさんに会いに行ってまた帰ってきてください」っておっしゃってて。そのコメントがすごく素敵でロマンチストな方なんだなと思っています。ロマンを持ってものを作られる方なんだなってすごく思いました。
(男性) ロマンチストは好きですか?
(のん) あ、好きです。私もたぶんロマンチックなほうが好きなので。
(男性) だからこそあの作品が作れたんですかね。
(のん) そうですよね。きっと。

 

 


(奥村) 片渕監督もロマンチストと聞いて思わず笑顔になられてましたけれども、ロマンチストなんですか。
(片渕) いやわからないです(笑)。割と最近のんちゃんと行動を共にすることが多いんですけど一回も本人から言われことがないです。
(男性) あ、そうなんですか。
(片渕) いつも僕のことをタフな人ですと紹介するんですよ。
(奥村) へぇー。
(片渕) タフなので録音の収録の時にすごく時間をかけて、その間休みを全然取れなくて私はお腹が減りましたっていう(笑)。
(一同) (笑)。
(奥村) でも実はロマンチストと思っていたという。
(片渕) ああ、よかったですね(笑)。
(男性) 自分でロマンチストと男はなかなか言えませんものね。
(片渕) なかなかね(笑)。
(男性) 原作も拝読して本当にいい作品だなと思ったんですけども、今回の映画は更にパワーアップしたという風に思ったんですけれどもね。やっぱりアニメにしたという事は何か大きなこだわりがあったんですか。
(片渕) そうですね。日常の生活、すずさんがご飯を毎日炊いている家とね、すぐ裏の畑から見えるくらいの軍港があってそこに軍艦が浮いていて戦艦大和なんかもそこにいるんですけども。それが同じ次元で描けるのかなっていうのがひとつと。もうひとつは原作のこうの史代さんのマンガが。漫画の表現自体がすごくチャレンジングというか、いろんな表現をするんですね。ときにはインクの代わりに口紅を使って描いたり、ときには左手でペンを握って描いてしまったりということをされていて。僕はアニメーションが、映画の中でもいろんなことができる技法だと思ってるんですよ。だから僕は僕なりにいろんなアニメーションの手法を使って、表現の可能性に答えるというかこうのさんと同じ姿勢をとってみようかなと思いました。
(男性) 以前こうのさんの作品で実写化されたものもあるんですけども、柔らかな画が直接動くことによって心に届くものって大きかったような気がしますよね。
(片渕) できるだけこうの史代さんの絵の魅力っていうものは消さないようにしようと思って。こうのさんは人物を描くときにこういう方向から狙って描いていらっしゃるなと思って、それを同じように踏襲して画面にしようと思って。
(男性) 日常生活をきちんと描いているこの映画なんですけれども、戦争になって何度も何度も空襲警報が鳴って、避難するときに登場人物の1人がね、「警報もう飽きた」でつぶやくんですね。

のんさんはこのセリフに戦時に生きる人のリアルを感じたっておっしゃってるんですけども、のんさんに作品を見た感想、そしてどんな人に見てもらいたいか訊いてきました。

 

 

 

(男性) ご自分で御覧になってどうでした。
(のん) 私が見たとき隣に原作者のこうの史代先生が座ってらっしゃって、それでもガチガチに緊張しちゃって、真隣で見るのか~と思って。本当に席と席の間が腕置き分ぐらいしかなかったので、ひぇ~やばい、緊張するって思いながら見始めたらこうの先生が椅子を座り直したりとか、手を動かすだけでびくっとなっちゃって、今なんて思ったんだろうみたいに。
(男性) でもそれは向こうもそう思ったんじゃないですか。
(のん) そうですかね。
(男性) のんさんが隣にいる。ちょっと緊張すると思いながら観てたかもしれませんよ。
(のん) わからないんですけどすごいビクビクしちゃいました。
(男性) 80年前、自分とは全然違う世界だと思うんですけども、どういう世界なんだっていう風に思いました。
(のん) 時代の違いで、違うところはあるなあとは思ったんですけど、全く知らない人のお家へ嫁ぐっていうのとか。でも私がこの作品で感じたのが昭和20年という時代の、自分がいる場所とは全く別なところにある、別次元のような気がしてたんですけど。そうではなくて自分たちが今いるこの場所と地続きで、その時代があったんだなっていうのを感じて。台詞でもある「警報もう飽きた」っていうのとかがすごくリアルだと思って。今の人たちにも伝わるためには自分の感覚も大事にしながら、兼ね合いというか解釈自体は今の人たちの感覚とはそんなに変わらないんじゃないかと思いました!
(男性) 今後、観てくれる方には一体どういうところを見てほしいと思っていますか。
(のん) そうですね。やっぱり日常の素晴らしさというのが大切に描かれている作品だと思うので、戦争というものが怖いと感じるだけの話ではなくて、その先にもずっと生活があって何が降ってきても日々が巡ってくる。その中で普通に生きてゆくということの力強さを感じていただきたいなと思います。

 

 

 

(男性) 監督、のんさんは自分の感覚も大事にしながら兼ね合いをうまくという話をされていましたけど、いかがでしたか。
(片渕) 僕もおなじようなことを思うんですが、戦争中の人って僕らと全く違う人だとどこかで思ってしまいがちなんですよね。モンペ履いたりとかして。でも当時の人達もモンペ履いたらカッコ悪いと思っていたっていうのがわかってきたりしてね。そういういろんな感覚っていうのが、実は僕らとあんまり変わらないのだ、むしろ自分たちと全然同じ人たちなのだというのがこの作品を作るためにいろいろ調べましたっていう中から、自分たちが得たことだと思うんですね。

それを僕はのんちゃんに演じるにあたっての指針として一つ一つ伝えていたような気がするんですね。そこでこの映画で描かれている戦争中っていうのは、ひょっとしたら今までいろんなドラマとかで描かれているのだと、ちょっと色々物々しかったりとか特別な空間みたいな感じがしたかもしれないんですけども、本当に我々がいる、「この世界の片隅に」っていう題の「この世界」っていうのは僕らのこの世界なのだと。僕らは2016年のこっちの片隅に行って、すずさんは1944年の片隅にいるんだけどその差はちょっとしかない。そのちょっとの差を乗り越えてすずさんのほうに覗きに行っていただけませんかっていう。
(男性) 戦争だ! っていう風に描いてるんじゃなくて、本当に淡々と描いているもの。これが心を打ったと、そういう映画でしたよね。
(奥村) ありがとうございました。ここまで映画監督の片渕須直さんにお伺いしました。『この世界の片隅に』は来週12日土曜日から全国の劇場で公開されます。片渕さんには番組の最後にもご登場いただきますので、是非メールTwitterでご質問などお寄せください。

 


最後

 

(男性) 本日は映画『この世界の片隅に』の監督片渕須直さんにお越しいただきました。 2度スタジオに入っていたがきました。たくさん質問が届いておりますのでお答えいただければと思んですけども。
(片渕) はいよろしくお願いいたします。
(男性) TwitterNHK的な硬さがあるというふうに書かれていますけれども大丈夫ですか。
(片渕) 大丈夫ですよ(笑)。
(男性) さっそく伺っていきます。 Twitterなんですが「のんさんは何か笑えるような失敗ありましたか」。
(片渕) これ僕が笑っちゃいけないんですけども収録の際にご飯の時間を抜いちゃったもんですから、すごい大きな音でお腹がなっちゃってマイクが拾っちゃってですね……、ごめんなさい僕のせいです。
(一同) (笑)。
(奥村) でも人間ですからね、お腹が鳴ることありますから。
(男性) はい、我々もお腹はなることがあります。
(男性) 入らないようにしよう入らないしようと思いますよね。
(奥村) それから「前作で監督自らアフレコ挑戦されていましたが、本作でも監督声を当てられたシーンはあるのでしょうか」。
(片渕) いくつかあります。 ひとつは役名で言うと下村宏情報局総裁っていうのやってます。玉音放送の後に締める人なんですよ。
(男性) はい。
(片渕) 「これで天皇陛下玉音放送を終わります」というのと。
(男性) 巧い。でもそれは趣味なんですか?
(片渕) 趣味じゃなくて昔の話し方を人に教えるよりも自分で覚えちゃった方がいいかなと。後は呉軍港とかの防空情報放送で「二〇三三、敵大型十八機、呉上空」とかを一生懸命やってました。
(男性) もう完全に覚えてますもんね。
(男性) ああ、そうですかあ。
(男性) ヒッチコックが自分の映画に必ずワンシーン登場するというアレではないんですよね。
(片渕) なんか段々そんな感じになってきましたね(笑)。
(男性) これからご覧になる方はそこも要チェックです!
(片渕) いやチェックしなくていいです!
(一同) (笑)
(男性) それから東京都の40代の男性からなんですが「片渕監督といえば作品化に当たって徹底的な考証や現地調査を行うイメージがあります。作品作りのために広島呉を実際に歩いてみた感想。今回の『この世界の片隅に』を見た後で足を運んでみてほしい広島、呉の場所などを聞かせていただければと思います」という質問が届いております。
(片渕) 広島は原爆で大変なことになってしまったんで昔のものがあまり残ってないみたいなんですけれども、爆心からすごく離れると昭和初期の橋とか残ってますし。建物も実は鉄筋コンクリートのものは結構残っていまでも経ってるんですね。これは普通の家でも戦前から立ってるものがものすごくたくさんあるんですね。『この世界の片隅に』の映画の中ではできるだけ残っている建物を描こうと思って。
(一同) ああ。
(片渕) そうすると映画ご覧になって、この場所だったんだなってその前に立っていただくこともできるし。映画の中のものは触れないですけど、実際に触ることもできますからね。
(奥村) ぜひあわせてロケ地巡りもしていただきたいですね。
(片渕) はい。
(奥村) それから「作品では戦時中でも小さな楽しみを見つけて暮らしている様子が描かれていたと思うんですけれども、片渕監督が落ち込んだ時にする、ささやかな楽しみがあれば教えてください」という質問が来ています。
(片渕) 最近はtwitterで色々ご感想を。すでに試写会や、先行上映でご覧になった方がいらっしゃるんで、結構そのご感想に励まされたりとか皆さんこんなに優しいんだなって思って、結構涙してしまったりしますが、すごいありがたいです。
(奥村) 皆様からの感想が、楽しみ。
(片渕) 楽しみでもありその次のものを頑張ろうって意欲の源みたいになりますのですごくありがたいです。
(男性) 公開まで一週間ですけど監督の心中はドキドキという感じなんでしょうか。
(片渕) 実は今日もさっきまで札幌でラジオ出てて飛行機乗って飛んできました。それぐらい、いろんなところで頑張ってます。
(男性) 飛行機が飛ばなかったらどうしようって我々もドキドキしながらお待ちしてたんですけども、一つ。40代の女性東京都の方。「ズバリお尋ねします。のんさんって「あまちゃん」の主演を務めた方ですか」。そうです!
(男性) 今夜は来週12日土曜日から公開される映画『この世界の片隅に』監督を務められた片渕須直さんにお伺いしました。片渕さん。ありがとうございました。
(片渕) あ、ありがとうございました。
(一同) ありがとうございました。
(永井) NHKジャーナル、永井克則。
(奥村) 奥村奈津美
(福田) 気象予報士、福田寛之。
(岩本) ニュース解説は岩本裕でお送りしました。
(奥村) また来週も夜10時にお会いしましょう。

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